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2010年09月29日

尖閣諸島問題をめぐって

 昨日、私の恩人の方から、電話をいただき、尖閣問題について「君はどう見ているのか」という質問をいただきました。その時にお話しさせていただいた内容について、ここでご紹介させていただきます。

 今回の行動を分析する視点として、重要なのが、今回の中国漁船による海上保安庁巡視船に対する衝突が事故なのか、故意なのかを見極めることです。

故意か事故かについては、多分闇の中でしょうが、故意であったと仮定して話を進めてみましょう。
 もし、故意だとしたら、なぜ、故意にそんなことをしたのか?何の意味があるのか?
 これは軍事用語でいうところの強行偵察ないしは威力偵察だったのかもしれません。
 強行偵察とは、偵察の際に、敵の出方と兵力を探るために、試しに敵のいそうなところに弾を撃ってみる。その反応によって、敵の戦力を推し量る方法だそうです。

 今回は弾ではなく、衝突でした。
 では、何の反応を見たかったのか。
 ズバリ、米海軍がどのように反応するのかを見たかったのだと思います。
 結果は、皆さんもご承知の通り、日米安全保障条約の範囲に尖閣諸島も含まれることを確認したようですが、実際に米海軍はなんら積極的な動きは見せませんでした。

 特に、中国としては、普天間問題を抱える日本と米国とのスキマ風の吹き具合がどの程度の大きさなのかをチェックしたいという意図もあったでしょう。

 また、副次的には、沖縄がどう反応するかも見極めたかったことと思います。中国は、沖縄を一定程度日本の本土から切り離して、中立化することを国の戦略として目指していると思われますから。

 そして、日本政府は、今回の事件が、そういう、なんらかの中国の国家としての戦略に基づいた行為であると思ったのか。それとも偶発的な事故にすぎないと思っていたのか。その後の中国の対応と日本の対応を見比べると、政府関係者がどれほど中国の戦略的意図を見抜いていたかは、疑問の残るところです。

 中国は、矢継ぎ早に、対応策を打ち出してきました。レアメタルの禁輸。日本への観光客の抑制。そして、日本企業社員の拘束です。

 これは、質問された恩人から聞いたのですが、かつて毒入りギョーザが問題になった際には、問題鎮静化のためでしょうか、その後、リンの禁輸措置を発動したそうです。お陰でリン肥料の価格が高騰したそうです。リンは国内では自給できませんから、まさに農業にとってのレアメタルと言ってよいでしょう。

 なんだか、一方的に中国側にやられっぱなしのように見えなくもない今回の事件ですが、いくつかの点で中国と対するための教訓が得られたのは事実です。

 まず、中国が日本に対してどのような外交カードをもっているかが明らかになったこと。
 レアメタルの禁輸措置に対しては、日本はこれまで以上に中国以外の調査先を確保することと、レアメタル代替技術の開発に官民挙げて取り組むことになります。

 続いて、日本人の拘束については、これまで以上に注意喚起を促し、特に、今回のような政府案件にかかわる企業に対しては、

 

 
 

2010年09月28日

2010.09定例会 一般質問② 協働について

先日の松下圭一先生の講演の際にも、私が先生に、協働についての考えをお聞きしたところ、わが意を得たりと言って、協働について否定的な意見を述べられました。その答えに対して市長もすかさず反論の質問をして、私もびっくりしたし、多分先生もびっくりしたのではないかと思います。よほど当麻市長は協働に対してこだわりがあることはよくわかった講演会でした。さて、協働については、今回万やむを得ない事情があって一般質問をお休みする中村議員も以前当麻市長に質問しました。ちなみにそのときに中村議員は、松下先生の協働の考え方を紹介しました。あらためて紹介しましょう。「実際に協働ということばを使っているのは、市民というより行政です。協働といいながらも実際はからめとり、支援、さらには保護・育成となり、協働がいつのまにか、行政による従来型の御用外郭団体の組織化へと逆流する」
このときは教科書的な答えしか返ってこなかったので切り口を変えて質問します。
私は、当麻市長は協働と市民参加をごっちゃにされているような気がします。

くわけん 今回の自治基本条例と総合計画の市民参加は協働ですか?
当麻市長 策定過程において、市民と市がお互いに情報を共有し、対等な立場において協力し議論を進めてきたので、協働の取組みと考えている。

協働と市民参加がごっちゃになっているのではないか?自治基本条例と総合計画の市民参加は、協働ではなく、あくまでも市民参加ではないか?
意志決定に参加するのが市民参加、で具体的な働きかけが協働と思っている。

くわけん 他市事例でも本市事例でも結構ですから、市長が考える協働の成功した事例をご紹介下さい。
当麻市長 本市の事例でいえば、トコロみまもりネット、所沢町造り商店の地雷などがうまく言っている事例ではないか。

つまり、協働を実現するには、名目的に行政側といわゆる市民側が対等、パートナーシップといってますけど、現実には、行政と市民の間には、まず資金格差、そして情報格差、人材格差があるわけです。行政側のみなさんからみたら協働かもしれないけど、市民からみたらどこまでいっても対等ではなく、はっきり言って下請けをやらされている、あるいは補助金の新しい形にしか見えないわけです。

ドラえもんでいえば、「ジャイアン」と「のび太」の関係です。「ジャイアン」のコンサートを開催して、行かないと仕返しが怖いから「のび太」も参加する。「ジャイアン」はよろこんでのび太を「心の友」よ、と言いますが、「のび太」からすればじゃいあんは「心の友」ではぜんぜんないわけです。

くわけん ちなみにお聞きしますけど、地域の底力支援事業は協働の事例ですか?
当麻市長 地域の課題を住民の皆さんみずからが解決されようとする取組に対して市も支援を行うので、協働の事例の一つと捉えることができると考えている。

私は、地域の底力支援事業は、協働じゃないと思います。いい制度だと思いますよ。ただ、新しい補助金ができたというにしか見えない。


くわけん 市長が協働がお好きなことはよくわかりました。市長の考える協働をわかりやすく実現する事業を来年度やってみたらどうですかね?そういった観点からみてどんな事業が考えられますか?

当麻市長 具体的には言えないが、既存事業についても見直す事が必要であり、新たな事業についても検討していく必要がある。

2010年09月10日

2010.09定例会 一般質問① 新所沢駅西口自転車対策について

 新所沢駅西口では、最近、駐輪取り締まりについての住民の皆様からの苦情を大変多くいただくようになりました。先日の新所沢駅西口再整備の話し合いでも、駐輪場を整備すべきという意見が多く出されました。

 どうも、本年4月から、これまでのねずみ色の方々に加えて、紺色の制服を来た方々が登場するようになってから、違法駐輪の取り締まりが厳しくなったようです。

 これは、議論の分かれるところだとは思うのですが、いい意味でも悪い意味でも、特にパルコ周辺の駐輪については、取り締まる側と取り締まられる側との、あうんの呼吸のようなものがあり、柔軟な運用がなされてきたように思います。

くわけん やはり厳しくしたということでしょうか?また、なぜ厳しくしたのですか?
 
大舘市民経済部長 新所沢西口の放置自転車対策については、市内でも特に放置自転車が多い、新所沢駅西口と所沢駅西口について指導強化を行った。

 その理屈はわからないでもないのですが、現実にここ5~6年ぐらいはこういったいわばルーズな運用に住民の皆さんも慣れ親しんできていたため、いきなり厳しくなったため非常に皆さん困惑しています。

 くわけん そこで次の質問です。私のみたところ、朝夕の通勤通学については、駐輪場は不足していないようですが、実態はどのようになっていますか。特に定期利用については、まだ空きがあるということでしょうか?

 大舘市民経済部長 新所沢駅西口には、市営の自転車駐車場が3箇所あり、定期利用している通勤・通学者の利用割合は、3箇所平均で約85%であり、各自転車駐車場とも、多少の余裕がある状況。

 くわけん そうですか、ということは、平日は10時~17時ぐらいまでの買い物利用の駐輪需要が多いということでしょうか?この時間帯の駐輪場は何台ぐらいなんでしょうか?

 大舘市民経済部長 特に多い時間帯は、午前11時~午後2時まので時間帯です。新所沢駅西口での一時利用が可能な市営自転車駐車場3箇所の台数は、合計283台。その他に、大型店舗が設置している買い物客用自転車駐車場は、パルコ新所沢店が206台、西友新所沢店が258台。
 
 やはり、西口周辺も土地が限られているので、なかなか新規に駐輪場を確保するということは難しいと思います。一義的には、やはり事業者の方が駐輪場を整備いただくということだと思います。新規の建設の場合、まちづくり条例では、20平米に1台、5,000平米超える部分については40平米に1台となっています。そうすると 売り場面積が18,144㎡ですから、550台程度が必要となりますから、300台ぐらい足りないのではないでしょうか?

 くわけん パルコさんは、この駐輪場不足問題についてどんな見解をお持ちなのか把握されてますか?私としては、ビックAはす向かいの駐車場の一部を駐輪場として提供していただけるといいと思っているのですが。

 大舘市民経済部長 パルコ新所沢店は、市の「所沢市自転車駐車場の整備及び自転車の放置の防止に関する条例」が施行される前に建設されたものであり、この条例の適用はないが、議員の指摘の通り、現実的に自転車駐車場が不足していることは、パルコ側も十分認識している。
 市としてもパルコ周辺の放置自転車対策は喫緊の課題と認識しているので、パルコや西友など大型店に対し、自転車駐車場の増設を申し入れている。
 パルコの屋外自動車駐車場の一部を自転車駐車場として整備できないかとのことですが、パルコ側でも自社の土地も含め、新規の駐輪施設の場所について色々と検討しているようです。市としても、議員の提案内容を含めて、改めて申し入れをしていきたい。

 さわさりながら、事業者のみに、その責を負わせるわけにもいかない。あんまりうるさく言ってパルコさんが出て行かれても地域住民は大変困る。行政としても何らかの手だてを打つ必要があるのではないか?

くわけん そこで、まず、いくつか検討していただきたいのだが、まず、先日も歩道への駐輪という話題が議会で出たが、けやき通りのスクランブルの先のURの中央公園側の歩道に駐輪場を確保するということは考えられないか?
 
 大舘市民経済部長 けやき通りの中央公園の歩道への駐輪場の確保については、今後、関係課とも調整を行い、可能性について研究する。

 くわけん さらに、現在駐車場となっている、パチンコ屋さんの東側、和菓子やさん向かいのUR所有地の一部をURと交渉して有料駐輪場にするということはできないのか?

大舘市民経済部長 UR所有地への有料駐車場の設置については、URへ申し入れをしていきたい。

2010年09月09日

民主党代表制は開国派と攘夷派の戦い?

 アエラ’10.9.13号11pで、内田樹氏が民主党代表選挙の争点は、管首相ら「対米宥和派」と小沢、鳩山ら「対米独立派」の対立だと見切っている。私もその見方にほぼ賛成だ。そのことは小沢氏が普天間返還を公約にかかげていることにも見てとれるし、鳩山氏が普天間返還にこだわった点からも言える。

 小沢氏の政治的DNAには当然田中角栄のDNAが入りこんでいる。もし、小沢氏が首相になったら、普天間返還を米国との交渉で実現させて、一気に支持率拡大を図る戦略だと思う。では、本当に普天間は返ってくるのか?わたしにはわからないが、小沢氏が米国に対してどのような対策を打つかは容易に想像がつく。田中角栄の手法を踏襲するとするならば、ずばり、カネだ。

 沖縄返還は、武力によらない領土回復としては稀有な例であり、それによって、佐藤首相はノーベル平和賞を受賞したと聞いたことがある。しかし、その裏では、日米繊維交渉という、米国内繊維産業の保護のために、日本からの対米繊維輸出を規制するという交渉の妥結があってこその返還といわれ、「糸を売って、縄を買う」と評された。その日米繊維交渉を仕切ったのが当時の田中角栄通産大臣だった。
 田中大臣は、国内の反発をカネ(補助金)によって抑え込み、無事日米繊維交渉をまとめあげ、沖縄返還への道筋をつけた。

 当時のニクソンの大票田は南部の繊維業者であり、少し脱線するが、南部は南北戦争以来伝統的に民主党支持であり、共和党の候補が大統領になるには南部の保守的な民主党が、共和党に投票することで大統領の地位を獲得できるのだ。

 米国は、アラスカをロシアから金銭で買ったことからも分かる通り、領土を功利主義観点から扱うことに抵抗感がない国ではないかと私は見ている。

 続いては小沢氏本人の経験である。小沢氏が自民党幹事長時代に湾岸戦争が勃発。日本は、90億ドル、当時としては約1兆2,000億円の多国籍軍への拠出を決めた。金を出して人を出さないことに一部から非難も上がったが、米国の指導者層かみればこれだけ巨額の支援で国内をまとめた小沢氏の力量を素直に認めたことと思う。小沢氏が幹事長というポストにこだわるのもこの時の成功体験があるのではないだろうか。

 以上の点から、おそらく、普天間返還にあたっては表にでるか出ないかは別として、グアム移転費の負担などとはケタの違う額の提示をすることで、一気に交渉に持ち込むという手法にでると想像する。
 アメリカはプラグマティズムの国なので、カネ次第でケリのつく国だという皮膚感覚が小沢氏にはあるのではないだろうか?

 対米交渉はともあれ、国内をまとめきる力量はやはり鳩山氏や管氏にはないだろう。どこのボタンをどうおせばいいのかが、いまひとつよく分かっていないようだからだ。
 
 もし、本当に普天間返還が実現すれば、当然ながら、マスコミはもてはやし一気に支持率は向上するかもしれない。

 ただ、このような手法は当然副作用も発生する。対米追従を第一目標とすると、当然中国に対するスタンスが甘くなる、と見られてしまう。これも田中角栄のDNAであるが、小沢氏は、中国を対米けん制のためのカードとして利用する傾向がある。また、日本政府に対する隠然たるロビイストである台湾独立派も、沖縄からの米軍基地縮小は避けたいシナリオだ。当然米国にもフプラグマティストだけでなく、国家主義的な方々もおられる。このような人たちがマスコミ等を通じて日本に介入してくると、なぜか、様々なスキャンダルがあふれ出てきて、政権維持がおぼつかなくなる。もうすでに今日発行の週刊誌には、小沢関連のスキャンダルが目白押しである。

 また、カネで交渉にケリをつけることに対する反発も若い議員には根強い。若い議員は、中国に対する小沢氏の態度にも不満な議員が多いのではないだろうか。
 カネで解決しないなら、人を送るしか方法はない。それが軍人であれ民間人であれ。小沢氏は「普通の国」ということを言っているし、国連に常設軍を置き、そこに日本も参加すべきという持論をお持ちのようだ。その点からすれば、当然人も送るという立場だと思う。しかし、短期的には米国相手にはカネなのだろう。

 そういう点からすれば、今回の民主党代表選の争点は、普天間返還ということになり、この点の主張はくっきりわかれている。また湾岸戦争の時と同様、カネを準備するためのなんらかの増税は避けられないことも覚悟しておくことだ。

 それとこれは、小沢氏に限らないのだが、どうしても人間は自分の過去の成功体験にしがみつく傾向がある。しかし、いつでも勝利の方程式が通用するとは限らない。小沢支持派は小沢氏の実績を強調し、この実績があれば未来も同様に問題解決できると思いたがる傾向があるが、事はそれほど単純ではない。成功体験に縛られると、いつかはその成功すべてを打ち砕く失敗を持って襲ってくることは歴史のありがたい教訓だ。そのことも肝に銘じておくことが重要だ。

 
 

 

2010年09月05日

神奈川県藤沢市でDPファシリテーターをしました ⑤

 全体会場へ移動後、それぞれのグループからの質問がありました。Iグループの質問時間は、最後の方になってしまったため、「時間もないため質問は1つに集約して質問して下さい」となってしまい、結局「他地域の地域活動が活発な事例」の質問になってしまいました。Iグループに限らず、午前の回答は、どうしても藤沢市のことについては答えないということになってしまったので、参加者の皆様は一様に不満そうでした。これは前回も参加したT氏によれば、同じように不満が出た点だそうですが、安易に市の担当者が答えてしまうと、そもそもの趣旨から外れてしまうので、なかなか市の意向ということは答えにくいとの事でした。
  しかし、一方で、じゃあ、他市事例についても、「たくさんある」という答えや、逆に「どこもうまくいっていない」という答えだったり、参加者の皆さんの全体討論についての満足度は低いようでした。

  その後、もう一度昼食をとっていただくために、グループ討論会場に移動していただきました。
  午後の全体討論では、一部回答者が交代したことも幸いして、藤沢市の事例についても紹介されました。午前については、高齢者問題が論点にあるのだから、高齢者対策についての高名な専門家を準備しておくともう少し参加者の満足度も高まったのかもしれません。午前の全体討論が一部の方に不評であったため、後半のグループ討論で、参加者に質問をもとめたところ、「どうせあんな回答しかないなら、質問をする意味がない」と言われてしまいました。

  午後は、午前とはうってかわって重苦しい雰囲気に包まれました。以前参加したファシリテーターの方からは「昼食後は打ち解けて、討議がはずむよ」と言われていましたが、テーマが抽象的だったこと、昼食後で眠かったこと、そして、せっかくの午前の盛り上がりが、全体討論で中断されてしまったこと、などの理由で、盛り上がりに欠けてしまった印象です。

 テーマですが、午後は大テーマが「藤沢における地域内分権と新しい公共」。中テーマとして、「藤沢における『地域内分権』」と「藤沢市における『新しい公共』」。私にとってはどれも好きなテーマですから、何時間でも議論できるテーマですが、関心のない方にとっては、馴染みにくく、かつ生活実感からもかけ離れたテーマだったようです。プログラム構成としては、実によくできているとは思いました。先ほども触れたように、午前、さらに討議が進めば、午前のテーマと午後のテーマは関連していますからスムーズに入っていけた可能性もありました。つまり、午前のテーマである「藤沢の高齢化と市民の選択」は午後のテーマ「藤沢における「新しい公共」と関係していますし、午前のテーマ「公共施設老朽化と市民の選択」は、午後の「藤沢における「地域内分権」との連関が読み取ることができます。

  ただ、ファシリテーターとしては議論の方向性を誘導はできないので、私の参加したグループでも、それほど午前と午後がスムーズにつながったとは言い難かったです。参加者の中にはその連関に気づいた方もいて、わざわざ午前での議論を引いて、午後のグループ討論において、そのことをわざわざ話題として持ち出してくれるかたもいらっしゃいました。

  私としては、午前に、主として「藤沢の高齢化と市民の選択」を討議したので、このテーマは、「新しい公共」との親和性が高く議論に入りやすそうだということで、午後は、「藤沢における『新しい公共』」、論点は「『新しい公共』という考え方に基づいて、藤沢の将来をつくっていくべき」を切り口に設定して議論を進めていただくこととしました。

  午前は、ほぼ全員の方々が発言をしていただけましたが、午後は、少数の方々が長い意見をお話される傾向が強まりました。特に午前に比べて、生活実感と結びつけ難いため、抽象的議論が好きな方々の発言時間が増えました。傾向としては男性の方が議論を支配する時間が長くなりました。

 ファシリテーターとしては、特定の方が長い時間お話されるというのは、ある程度コントロールするべきかとも思ったのですが、お話された方が、ご自身のご意見の披瀝というより、「新しい公共」などについて、他の参加者の方に解説・説明していいただいている側面も強かったため、非常に迷ったのですが、あまり介入せずに発言いただきました。お陰で、他の参加者の方々の午後のテーマについての理解も深まりました。ある参加者の方からの発言がそのことを象徴的に表しているのですが、その方は、「『新しい公共』とは例えば藤沢市には動物園がないので、どういう新しい公共施設を今後整備していけばよいかという事だと思っていた」という発言に集約されるように思います。 
 
 その後も、他の参加者からも、「『新しい公共』という意味がようやくわかった。自分がこういった行政についていかに知らずに無関心だったかを思い知らされた。今後はこれをきっかけにもっと行政についても関心をもっていくべきだ」などの発言が相次ぎました。午後のグループ討論は、ほぼ、テーマを理解するということに時間が費やされました。そのことはそれで貴重だとは思いますが、理解から討議へまではなかなか行き着かなかったというのが、実態だったといってよいでしょう。
 しかし、世論調査という観点からいえば、午後のてーまについては、それだけ住民の方々に馴染みがないということは明らかになったわけですから、その点においても貴重な討議であったと言えるでしょう。午後の質問は、「『新しい公共』とは新しい公共施設整備のことだと思っていた」と発言されていた方に質問者となっていただき、全体討論での質問内容を決定し、午後のグループ討論を終えました。午後は、沈黙が支配する時間も長かったのですが、終盤には、皆様もテーマについての理解も深まり、盛り上がったところで、時間終了となりました。
 午後の全体討論は午前の反省が早速反映され、曽根先生も藤沢市の事例についても積極手に取り上げていただいたため、午前より参加者の満足度も高かったように見受けられました。ただ、できれば、午前からそのようにしていただければ、午後の質問作成ももう少し盛り上がったのではないかと思われます。
 最後に全体討論の会場で、朝と同じテーマのアンケートを作成していただき、参加者の方々には謝礼(5,000円)をお渡しして、解散となりました。

つづく

2010年09月04日

神奈川県藤沢市でDPファシリテーターをしました ④

 
 午前中は、大きなテーマとしては「藤沢の選択」。さらに、中テーマとしては、「藤沢の高齢化と市民の選択」、「公共施設老朽化と市民の選択」。前者の論点は、「高齢化対策にどんな仕組みで対応するべきだと思いますか」。後者の論点は、「今後、老朽化する公共施設の廃止・維持・建て替えなどの方針は誰が中心になって議論をするべきだと思いますか」。

 前日の研修会でも質問がでたのですが、90分のグループ討議で、「どのような時間配分でどういう順番で議論をすべきなのか」という質問をさせていただきました。曽根先生からは、「この二つのテーマはそれぞれ別のように見えて、実は同じテーマです。一方は人の高齢化問題。もう一方は建物の高齢化です。それぞれの高齢化に対してどのように対応するべきかを選択していただくのが趣旨ですので、特に2つともやらなくてもよいし、やってもよい。自然な議論の流れに任せて下さい」といった趣旨のお答えをいただきました。
 
  なるほどそうかと納得はしたのですが、ただ、論点の切り口として、前者は、仕組みのあるべき姿、つまり、高齢者対策は公的部門が中心になって担うべきという考え方と、それだけでは不十分なので、NPOなどの民間部門がより積極敵に対応していくべきという、理想的な対応の仕組みがどうあるべきかの議論ですが、後者は、公共施設の老朽化について、行政が議論をすべきか、市民中心で議論すべきか、という決定者をだれにするかという論点となっています。この2者では、ちょっと位相の違う論点となっている点がやっかいでした。

  議論のしやすさという点では、後者は、「公共施設は建て替えを中心とすべきか、建て替えではなく、維持、修繕を中心とすべきか」というテーマ設定の方がわかりやすく位相も同じとなり、議論がしやすい印象を持ちました。ですので、私は、前者のテーマ「藤沢の高齢化と市民の選択」の「新たな仕組みをつくり試行錯誤をしながら対応するべき」を切り口として選択し、議論を始めてもらうこととしました。

 さらに、このテーマについて「個人的な経験があればおっしゃって下さい」とお伝えしました。やはり、高齢者の見守りなどに関わっている方から発言があり、このテーマについては、順調に話が進みました。一瞬話が途切れることもあり、皆黙りこくってしまうのですが、いよいよ発言しなくてはいけないかなというタイミングで、また別の方が意見を出していただきました。

 また、議論の内容が拡散し、論点がぼやけて来た際にも、少し私が論点をもう一度確認していただくために、発言しようとしたタイミングで、同じように議論を論点に引き戻すべきという発言を参加者がされました。
  「ファシリテーターは全体の発言の5%以下とすること」という指導を前日に言われていましたが、午前のグループ討論については、5%以下を達成できました。高齢化についての議論はその後も発言が相次ぎ、そのまま、高齢化の議論だけで午前は終わろうかという時点で、質問案について、参加者にお諮りしたところ、ある参加者から「施設老朽化について質問をしたい」との意見をいただきました。「施設老朽化については議論をしないのか」とも言われました。

 その方の質問は、「地域に同じような目的の施設が重複しており、整理統合を図るべきではないか」という質問でした。特に、「市民の家はムダではないか」とのことでした。続いて別のかたも同様に施設老朽化について発言をされました。

 すでに、グループ討論の時間も限られていたので、まずは私の進め方が未熟だったことをお詫びし、質問項目として、その方の質問を採用することで皆さんのご賛同をいただき、黒板に質問内容を板書しました。その後、他に何か専門家に質問したいことはないかとお聞きしたところ、別の方から「高齢者対応などで、自治会や町内会などがうまく対応している事例が他市町村にあるかどうか聞きたい」との意見が出されました。

 前日の研修では、なるべく質問は一つにまとめることという指示でしたが、場合によっては2つでもかまわないとのことでしたし、また、この二つはちょっとまとめるにはあまりにも共通項目がないので、Iグループは、後者の質問をされた方が質問者となっていただくことを決めて、二つの質問を行うこととしました。
 
 いずれにせよ、午前の討論は、自己紹介の時間やお互いに打ち解けるまでのリードタイムも必要ですから、当初の90分ではなく、さらに10~20分程度時間を伸ばす方がより充実した討議ができたように思います。

つづく

2010年09月03日

神奈川県藤沢市でDPファシリテーターをしました ③

さて、DP当日ですが、まずは、参加者全員が全体討論会場に集合して、各グループごとにまとまって着席し、アンケートに回答していただきます。
アンケート後、グループ討論会場へ移動しました。
 会場ではカタカナのロの字型に机が配置されていました。ファシリテーターとファシリテーター補の席は、黒板の前ではなく入り口に近い位置に陣取りました。もし、黒板前の席に座ってしまうと、どうしても、議論のまとめ役というポジションになってしまいます。 
 そのことを防ぐためにも黒板前の席は避けました。まずは自己紹介からですが、氏名と今回DPに参加した理由、居住地域について簡単に語っていただきました。私も自己紹介では、氏名しか名乗りません。なぜなら、自分の職業を名乗ってしまうと議論にどうしてもバイアスがかかってしまうからです。特にファシリテーターが大学教授などの場合、ファシリテーターが権威となってしまい、参加者が話しにくくなってしまうそうです。藤沢市の職員もしくは関係者であった場合は、今度は、そのファシリテーターへの陳情合戦になってしまうので、いずれにせよ、自己紹介は「ファシリテーターです」としかしませんでした。
  
 各自の自己紹介後、参加者に対して、議論のルールを説明します。「結論を出す為の議論ではないこと」「皆が互いの意見に耳を傾けること」「意見が違う方の意見も尊重すること」などです。特に、大事なのが、「結論を出す為の議論ではないこと」です。ここの部分を参加者が充分理解していただければ、「他人の意見の尊重」の意味が必然的に導きだされます。この点は、BS(ブレーンストーミング)の4原則(結論を出さない、突飛な意見も尊重する)の一部にも共通する点があるようです。
 また、議論の中で出てきて参加メンバー間で解決できなかった疑問については、専門家に全体討議の際にお聞きするので、最後にこのグループの質問を1問決定することをお伝えしました。

つづく

2010年09月02日

神奈川県藤沢市でDPファシリテーターをしました ②

さてでは、DPについて、実際に時系列を追ってファシリテーターとして参加してえられた知見を差し支えない範囲でご紹介したいと思います。

 まず、前日のファシリテーター向けの事前レクチャーが行われました。今回は、DPの発案者でもあるスタンフォード大学のフィシュキン教授(スタンフォード大学DPセンター)とテキサス大学ラスキン准教授らから直接その原理原則をレクチャーいただきました。その後、質疑応答では、特に前回、前々回ファシリテーターとして参加された方から、過去の実践例に基づく質問がなされました。

 その後、実際に2班に分かれて、ファシリテーターが討議参加者となって、グループ討議のシミュレーションを実施しました。まずは、未経験者がファシリテーター役となり、本番の手順通り、最初の自己紹介から始めました。他の既にファシリテーターを経験なさった方が、実際の事例を強調した形での扱いにくい参加者のパターンを演じていただきました。フィシュキン教授の原理的なお話も参考になりましたが、DPファシリテーター既経験者の経験談も大変参考になりました。

 私の場合、自分の意見を表明しないために、能面のように表情を出さずにファシリテーションを行っていたところ、「それでは参加者も固くなり、話しやすい雰囲気が醸成されない」とのご指摘をいただきました。「もっとリラックスした感じでやる方がいい」「ようするにちゃらおの様な感じのほうがいいのよ」とのアドバイスで、随分肩の力が抜けました。

つづく

2010年09月01日

神奈川県藤沢市でDPファシリテーターをしました ①

 8月28日(土)、神奈川県藤沢市の慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスで開催された、藤沢市の総合計画策定に関わる討論型世論調査にファシリテーターとして参加しました。
 
 松下政経塾には政経研究所というのがあり、私も自治体経営改革プロジェクトに副座長(だったかな?)として参加しています。座長は海老根藤沢市長です。

 以前にもDPのことは討論型世論調査の衝撃ご紹介したかと思いますが、無作為抽出で選ばれた市民の方々に一定のテーマについて1日がかりで議論していただくというものです。

 午前には「藤沢の選択」として、「藤沢の高齢化と市民の選択」、「公共施設老朽化と市民の選択」、午後は、「藤沢における地域内分権・新しい公共」として「藤沢における地域内分権」「藤沢における新しい公共」がテーマでした。

 午前、午後共にまず90分グループ討議を行い、その中で専門家に聞きたいことを全体討論として70分、全員が一同に会して行います。

 今回は、ただそれぞれの討議を傍聴するだけではDPについて深く知ることができないと考え、グループ討論のファシリテーターを希望しました。関係各位のご尽力により、にわかファシリテーターとして討議に参加することができました。終わってみて、やはりファシリテーターとして参加してよかったという印象です。

 ファシリテーションについては、本当に偶然なのですが、日本のファシリテーターの草分けとも言える、九州大学准教授の加留部貴行氏のお話を、本年8月19~20日に佐賀県武雄市で開催された自治体学会でお聞きする機会に恵まれたため、直接ファシリテーターの役割とは何かということをお聞きしたわけではないのですが、氏の学会における発言等で、ファシリテーターの何たるかを、加留部氏のコーディネーターのあるいはパネリストとしての発言ぶりからつかめました。

 最も松下政経塾出身者にとって、松下幸之助という偉大なファシリテーターの薫陶を受けて育ってきた私達にとって、素直に他人の話を傾聴する重要性や、衆知を集めることの意義など、基礎的な部分においては一緒ですので違和感もなくすんなりその原理は理解することができました。もっとも日常生活においてそれが実践できているかどうかはまた別の話ではありますが。

 今回、DPを研究テーマとして選択した理由も、新しい住民からの意見聴取の方法論という側面もありますが、DPこそが、松下幸之助経営哲学を政治に応用する道具として有用であるということもあったように思います。というより、そのことに今回ファシリテーターをやって改めて再発見したのですが。ですから海老根市長や松沢知事など、塾出身の首長が熱心にDPに取り組むのも松下幸之助経営哲学のDNAをもっていればこその事なのでしょう。

 つづく。