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オランダ ユトレヒト市 ライツェ・ライン地区開発について

 ユトレヒト市西部の、新規住宅商業開発地域であるライツェ・ライン地区を訪問した。
 まずは、現地案内所を訪れ地図や英語版パンフレットをいただき、オランダ語版のいくつかの書籍を購入する。その後、現地見学用の地図を手がかりに、実際に現地を視察した。
 ユトレヒトは、2015年までに、3万戸の住宅をこの地域に建設し、8万人がここに住むことを見込んでいる。そのため、まだ、建築途上の地域も多かった。
 以下、英語版のパンフレットと、現地視察の様子を元に、ライツェ・ラインについて報告する。 この地域は、これまでのやりかたとは違ったデザインプランで計画されている。住区(neighbourhood)ごとにデザインと設計がされるため、都市計画家や建築家は新しい開発にあたって、既存の住区の状況に合わせてデザインすることができる。つまり、あらかじめ、全体計画を決めて、分担して取り組むのではなく、一つ一つの住区ごとに段階的に作っていき、その結果を見ながら、次の住区は計画できるというやり方をとっているようだ。
 また、当然ながら、住区ごとに一定の調和をたもちつつも、それぞれ個性の異なるデザインがなされるため、結果的に個性的で多様性のある住空間が生まれることを目指している。 実際に、見てみるとなるほど、おおよそ30軒程度の住区のまとまりごとに、まったく建築様式が異なっている。しかし、一方で、それぞれの住区同士の調和も保たれている。
 さらに、イラスト入りのオランダ語版の本を見ながら想像する限りでは、これまでの歴史上の住区の様々なパターンを研究し、その構造を現代に再現しているようである。 典型的には、住区同士、あるいは住区内に、路地裏を敢えて作り込んでいたりする。その路地裏を通って児童公園にたどり着くようになっている。 それ以外ににも、様々な歴史上の住宅や住区構成のパターンをとりこんでいるようだ。  ライツェ・ラインは、単なる住宅街ではなく、ビジネス街も中心部に計画しており、70万平方メートルのオフィス街区を設置し、40,000人がそこで働けることを目的としている。 また、同時に、この地区のインフラストラクチャの整備も同時に進めており、高速道路へのアクセス道や、ユトレヒト中心部へ向かうための3つの橋も建設されている。まだ、新しく2つの駅も新設する予定だという。
 ライツエ・ライン地区の更なる特徴としては、環境に配慮した、持続可能な地域を目指している点があげられよう。 なるほど現地を見てみると、あちこちに、堀が掘ってある。雨水は下水管に流さすに、この堀に流すようになっている。ちょうど乾燥地のワジのように、降雨時にはこの堀に水がたまり、降雨がないと、涸れた堀となる。このワジがちょうどフィルターの役目を果たし地中に滲みこむ水を浄化する。また、一定の雨水が地域内でとどめられるので地下水位を一定に保つ効果も期待できる。 この地区では中水利用も計画されており、貴重な飲料水を25%節約できるという。
 この地域の開発におけるユトレヒト市の役割としては、計画を達成するための開発ディレクターとしての立場におかれている。例えば事前の条件決定や、土地の購入、土地の供給、計画の先導、中央政府や民間デベロッパー、都市計画家、建築家との交渉などを行うことなどである。
 この計画の完成によって、新たに80,000人の人口増を促すことを目的にしているという。自治体がこれほどのリスクを抱えて新たな事業に取り組むというのは、特に最近の日本では例をみない。ちなみにユトレヒト市はこのライツェ・ライン地区の完成によって8万人増えて、所沢市と同じ人口33万人となる。
 街づくりといっても、最近の日本では、トンネルや道などの基盤インフラ整備と何らかの開発行為への規制及び誘導というのが、自治体としては精一杯である。しかし、このライツェ・ラインでは、より積極的な役割を自治体が果たそうとしている。所沢市でもいくつかの区画整理事業が進行中であるが、街のデザイン計画まで含めた形で自治体が関わるというやり方を検討してもよいのではないだろうか。ただ、このライツェ・ラインのような大枠の計画は決めても、時代の変化に合わせて計画も柔軟に組み替えていくというやり方は、今の日本では相当困難を伴うだろう。
                                      以上

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