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 介護保険は老いを守るか(岩波新書)批評④

 ちょっとネガティブな評価になってしまいましたが、今回はポジティブな評価を。
 というか、いまから紹介することを読みたくて、今回この本を買いました。
  
 三つの入口、三つの出口(112p)の部分です。
 著者は、介護労働安定センターが毎年実施している「介護労働実態調査」に基づき分析しています。
 著者によれば、介護職員の就職理由は「働きがいを求め、人の役に立ちたくて、今後もニーズがある」
 。辞める理由は、「経営理念、人間関係、収入」。「男性だけ見ると、「収入」が全項目のトップに」ということだそうです。

 続けて著者は、
 特養ホームなどでは(中略)同族による経営や、二世、三世の施設長も多い。「昇進の見込みがない」「使用人扱い」と怒る職員のいることも確かなのである。特養(特別養護老人)ホームの施設長には、試験による国家資格が必要という職員も多い。 とのことである。

 私も、以前松下政経塾で高齢者福祉を共同研究で実施した際に、いくつかの特養を訪問させていただいったが、当時は、介護保険施行前ということもあり、特養は、宗教系か地主系が多かった。特に地主系は、自分の地所の有効活用策として、特養を運営しているケースが多かったような印象である。
 特養は、国からの貸付制度もととのっており、また、開設できれば確実に入所者が見込めたため、手堅い資産運用という側面もあった。ただし、運営資格が厳密で、社会福祉法人でなければほとんど認められず、社会福祉法人にした場合、地所については法人への寄付となる。
 こういう経緯もあり、どうしても、特養ホームは自分たちの資産という意識が強い。当然、資産を手放したので、施設から上がるフローを親族で分け合うのは当たり前という感覚になる。よって、今回著者が指摘したような、施設長の世襲、親族支配、が起こってくる。

 介護保険施行以後は、そういった資産運用としての特養という形態だけでは需要に追い付けないので、様々な運営主体が増えていますが、この一連の問題は、非常に根深くかつ深刻で、特に地方においては、政治勢力とそうした社会福祉法人が結びつきが強いので、保険者が市町村である介護保険にあっては、透明性の確保や私物化の排除に困難が伴います。

 さらには、参酌基準としての施設整備の34%が今後廃止になると、そういった癒着が残っていた場合には、一定の政治力をもつ法人がさらに勢力を拡大する可能性は敢えて指摘しておきたいと思います。
 もちろん、原則は参酌基準廃止は賛成ですけどね。
 
 

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