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佐久市の住民投票を視察してきました

市長発案で住民投票を実施した長野県佐久市長を訪問

至誠クラブでは、平成23年7月21日会派5名全員で、長野県佐久市を訪問。佐久市を視察先に選択した理由は、平成22年に佐久市総合文化会館の建設の賛否を問う住民投票を実施したことによる。また、佐久市の柳田市長は、荻野議員のお知り合いということもあって、直接市長にお話を聞く機会をいただいた。
ご承知の通り、所沢市でも、住民投票条項を含む所沢市自治基本条例の制定と施行により、住民投票実施のハードルが低くなり、住民投票が行われる可能性がこれまで以上に高まっている。
しかし、現実には、日本の地方自治体で、住民投票が実施される例はまだまだ少ない。また、実施されたとしても、例えば原子力発電所や大規模土木事業の賛否や、合併についての賛否を問う場合に実施されることが多い。佐久市のように、ハコモノ建設の是非を巡って住民投票が行われた例は珍しい。しかも、佐久市では、住民投票によって、佐久市総合文化会館の建設計画は事実上中止となった。
今回の住民投票は、直接的には、5期20年続いた市長の退任による市長選挙が発端となる。市長選挙では、市長の後継候補と、今回市長となった柳田氏の対決となり、総合文化会館建設が大きな争点の一つとなった。市長後継候補は「早期建設」、柳田氏は、「慎重な検討」であった。建設中止派は柳田氏を応援したという。建設中止派は、「慎重な検討」ではなく、「建設中止」を明言するよう求めたそうだが、「民意の確認なしに中止するのは、民意の確認なしに建設することに等しい」と突っぱねたそうだ。
選挙で一定の民意が示されたという判断であれば、わざわざ住民投票を実施しなくても、予算化さえしなければ、現実には事業は動き出さない。あるいは、施設建設についての検討委員会などの附属機関でじっくり議論を行うという方法もある。ただ、文化会館用地は、合併特例債を利用していたため、いつまでも先延ばしできないという事情があったという。

平成21年4月、柳田市長就任後、同年秋に早速幹部職員に対して、市長は住民投票を提案したそうだが、幹部職員の反応は思わしくなかったそうだ。というのも、文化会館用地の取得のために区画整理事業で減歩を住民にお願いしたといった苦労を重ねた幹部職員もいたそうで、そういう職員にとっては、簡単に納得できなかったそうである。まずは、副市長提案で住民投票について学習することとした。その後平成22年年頭の新年記者会見にて、住民投票を行う意向を表明。議会などからも反発があったそうだが、市長は、「佐久市民の民意が確認できない以上、建設も中止も行わない」とした。住民投票を実施せず、建設推進が確認できない以上、市長が替わらないかぎり建設は凍結されることになる。この点は、予算提出権を独占的に持つ市長の力は絶大だ。平成22年9月臨時議会において、「佐久市総合文化会館の建設の賛否を問う住民投票条例」が議会による一部修正により可決。議会の修正ポイントは、①投票資格者を、永住外国人を含む18歳以上から、永住外国人を含まない20歳以上に、②成立要件を、投票した者の総数が、投票権を有する者の総数の2分の1に満たない時は、投票が成立しない、③建設賛成の場合は、「従来通り案での建設」」と「費用圧縮案での建設」が選べる、の3点が追加された。
これで、投票率が50%を越えない限りは、投票そのものが無効になる可能性が出てきた。議会も、修正した以上は、住民投票に対して、協力する義務を負うこととなった。
条例制定以後は、延べ21回の市民説明会、2回の公開討論会、職員が街頭へ出て手を振っての投票PRなどを行ったという。市民説明会では、夜7時から開催。その日に出た質問は次の日にホームページで公開。これが、次回の説明会の資料として追加される。その後の説明会で同じような質問が出された場合は、これまでの説明会での回答を示した。この方式によって、同じ質問の繰り返しが防がれ、議論が回数を重ねるごとに深まっていったという。また、公開討論会の様子は、ケーブルテレビとFM佐久平で中継した。
ケーキ職人の会の皆さんが、投票率50%突破の際には、ケーキを50%OFFというキャンペーンを行ってくれたという。
平成22年11月14日(日)に投票が行われ、投票率が54.87%。賛成1万2,638票、反対3万1,051票。この結果を受けて、市長はただちに計画の中止を発表し、議会も受け入れることとなった。
その後、この予定地に、「市民交流ひろば」として整備することが発表された。

質問 よく否決されませんでしたね。
市長 住民の意見を聞き尽くした自信があったので否決が可能だと思った。

質問 なぜ7割もの反対が出たのでしょうか。
市長 近隣に同じような施設の建設計画が3つあることも影響した。また軽井沢に、800席のソニーの大賀元会長が寄附したホールがあったことも、大きかった。

質問 合併特例債で用地買収などをしていますから、特例債償還のための地方交付税は国に返還の必要があるのではないですか。
市長 長野県は懸念を示しましたが、国の見解によれば、特に文化会館建設と特定していなので、なんとか返還しなくて済みそうです。

質問 住民投票全体でどれくらいのコストがかかりましたか。
市長 コストが3,000万円ほどかかりました。

 以上、佐久市における柳田市長からのお話である。
 現在、国の地方行財政検討会議では、「住民投票の制度化」を検討している。今後二元代表性がさらに意識されてくるようになってくると、当然首長と議会の意向が違ってくる場合がでてくる。そうした際には、住民投票は有効な手法ではないだろうか。しかし、一方で、何でも闇雲に住民投票にかけるというわけにはいかない。今回の佐久市の場合も、住民投票に約3,000万円のコストがかかっている。住民投票は、まちの大きな方向性を定める項目に限って運用されることが望まれる。それ以外の部分ではやはり議員がしっかりと住民の負託を受けて判断をしていくことが、重要であることを再認識した。

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