2013.09 一般質問③ 中学生医療費無料検証について
基本的には素晴らしい、かつ子育て世代には有り難い事業である。ただ、ここにきてさいたま市がこども医療費無料制度について公開審議などを通じて検討するという方針を打ち出してきた。そこで、改めて、医療費無料化について、特に2年前から始まったことで検証がより容易な中学生医療費無料化について、政策効果の検証を行ってみたい。
くわけん まず、基本的なことをお聞きするが、それまで小学校6年生までだった医療費無料化を中学生まで拡大した理由は?
仲こども未来部長 厳しい経済状況の中ではありましたが、すべての子育て世帯対象に経済的負担を軽減するため、また、すべての子どもが安心して医療にかかれるよう考え拡大した。
意外と理念的な理由であることはわかった。
ただ、やはり、地域間競争の中で、特に子育て世代に対する住民サービス競走の結果拡大していったというのが、本音のところではないかと思う。
実際に、この中学生への拡大にむけて、どういう政策効果が生まれたかを検証したい。
くわけん 制度実施前の平成22年と実施後の現在で、所沢市在住の中学生の数はふえているのか数字で示していただきたい。
仲こども未来部長 平成22年8,062人、平成23年8,117人、平成24年8,126人、平成25年8,129人
くわけん 近隣市で、中学生への拡大を行っていない市はあるか?
仲こども未来部長 川越市は12歳年度末まで、入間市は9歳年度末まで。ただし、入間市は平成25年4月から15歳年度末まで対象を拡大。
くわけん そういった市では逆に中学生の数は減ったのか?
仲こども未来部長 川越市は、平成22年 10,586人 平成23年 10,468人、平成24年 10,200人、平成25年 9,909人
入間市は、平成22年 4,262人 平成23年 4,205人、平成24年 4,127人、平成25年 4,096人
上記のとおりどちらの市も多少減少しています。
なるほど、やはりこういった数字を聞くと、子育て世代を引きつける制度であるようだ。
医療費無料化は一種の現物支給であるが、一方で、児童手当の名目で現金支給も行っている。改めて確認すると、
くわけん 現在の中学生に対する児童手当の状況はどうなっているのか?所得制限はあるのか?また児童手当に関する国や県の補助割合は?
仲こども未来部長 手当月額は1人当たり10,000円。補助割合は国が2/3、県は1/6。
平成24年度の事務事業評価表の評価の項目では、「受給者や医療機関に対して適正受診を呼びかけ、全体的な支給額の軽減を図るための啓発が必要である」と記載されている。
確かに無料は素晴らしいことではあるが、無料であることで様々な問題があることも歴史が教える事実である。
ある方から聞いたところ、実際に中学生の学校のケガで、中学校医療費無料化されているため、災害共済給付金を請求できるのにしなかったという事例があるという。
くわけん 確認であるが、制度導入前と後で、災害共済給付金の請求数に変化はあるのか?
川音学校教育部長 平成22年が1,419件、平成23年が1,401件、平成24年が1,123件。
なるほど、この数を聞く分には、そういった実態があるといわざるをえない。
くわけん 申請から給付まで平均どれくらいの日数がかかるのか?
川音学校教育部長 保護者が学校に申請書類を提出し、教育委員会経由で、スポーツ振興センターに申請、給付までに最短でも2ヶ月かかるが、所沢市では教育委員会とこども未来部との連携により、学校管理下でケガした場合、一旦こども医療助成制度を利用できるため、保護者の窓口支払いは必要ない。この場合、一旦は建て替え払いを行うが、保護者には、必ずスポーツ振興センターに申請手続きをしていただいている。
くわけん 災害共済給付金の請求を徹底するということでよいか?
川音学校教育部長 こども医療助成制度はあくまで一旦利用。スポーツ振興センターの災害共済給付金の手続きを必ず行うよう学校に徹底。
また、2010年4月から、患者に対する医療費の「診療明細書」の無償発行が、保険医療機関などに対して原則として義務化されている。
現状においては、医療費無料化に伴い、受診後に当然何も支払っていないのだから、領収書もましてや診療明細書もわたされないことが多い様に聞いている。
くわけん 原則は、診療明細書は渡すということでよいか?
仲こども未来部長 領収書を交付するに当たっては、正当な理由がない限り当該費用の計算の基礎となった項目ごとに記載した明細書を無償で交付しなければならない」と平成22年3月5日付け厚生労働省保険局長より文書が発信されておりますので、原則無料で診療明細書を渡すということでよろしいと考える。
くわけん 実態はどうなっているのか把握しているのか?
仲こども未来部長 市内の小児科などいくつかの医療機関に確認したところ、必ず交付している、希望者のみ交付している、などその取り扱いは様々。
くわけん 無料化だからこそ、診療明細書を発行できる医療機関については、要らないといわれない限り診療明細書を渡すべきと考えるがいかがか?
仲こども未来部長 診療明細書を渡す意味から考えると、すべての受信者の方に渡すのが望ましいが、これについては、各医療機関がそれぞれ判断しているのが現状。
やはり、中学生のお子さんのいる子育て世代をつなぎ止める政策としては、一定の成果が上がっているといえる。一方で、やはりモラルハザードも生じている気配がある。
くわけん 制度の是非はともあれ、この政策の効果について、改めて詳細に検証を行う、あるいは、さいたま市のように、市民の方々から意見を伺う機会を作るべきと考えるがいかがか?
藤本市長 貴重なご意見をいただいた。さいたま市や他の自治体の動向なども注視しつつ様々な角度から検証してまいりたい。