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講演会「なぜ今、まちづくり基本条例が必要なのか?!」を聴講しました

 08年5月25日(日)午後1時から、新所沢公民館大講堂で、地方自治総合研究所所長の辻山幸宣(たかのぶ)先生をお招きして表題の講演会が開催されました。参加者は、最も多い時で32名でした。参加者のうち、少なく見積もっても3分の1は見知った方々でした。

 のっけから辻山先生が、「まちづくり基本条例が必要なのか、と聞かれたら必ずしも必要とはいえない」と挑発的なご発言で講演が始まりました。
 
 また、「150ほどあるまちづくり条例や自治基本条例を制定した自治体のほとんどが有効活用できず、例規集に掲載されてそれで終わりになっている」
 とのことでした。

 お聞きしたところ、辻山先生は北海道出身ということで、その正直な物言いは北海道出身者ならではだなと、北海道出身の私としても変に感じ入ってしまいました。

 もっとも、話の重点としては、それでもなお「本当の自治を目指すなら」「まちづくり基本条例を作ることは必要なんですよ」というところが先生の最も言いたかったことだったようです。

 先生ご自身も、現在のまちづくり基本条例、自治基本条例(以下 基本条例と略称)の有り様についてはご不満なんだろうなということが、言葉の端々から伝わってきました。

 くわけんとして、最も印象に残ったのは、ある参加者の、「実際にまちづくり基本条例がどのように機能・作用するのか見えてこない」という問いに対して、先生が、「協働とよく役所は言うが役所のいう共同は、自分達が協働したいところだけ取り出して、その部分についてだけ、協働しようと呼びかける。本来の協働とはそういうことではなく、ずべての行政の営みを公共の観点でその役割分担を見直すことだ」と回答された点です。
 私も、この点はおおいに賛成です。

 以前、我孫子市の前市長の福嶋さんに、松下政経塾の勉強会でお話を伺った時にも同じようなことをおっしゃっており実際に制度化しました。「提案型公共サービス民営化制度」という制度で、役所のほぼすべて、1070の事業について、NPOや民間でできる可能性のある、あるいは、役所以外で事業をやったほうが良い事業について提案を受けたというお話です。福嶋前市長が理想的な事例として取り上げていたのが、しあわせママパパ教室という事業で、これまで、市の保健師が取り組んできたお産前の妊婦に対する指導を、柏・野田地区助産師会が全面的に行うという提案です。それまでは、我孫子市の保健師さんが行っていた事業だそうです。保健師さんは妊産婦に限らず幅広い世代を対象に保健業務を行っていますが、助産師さんは、出産に特化して業務を行っているので、市が提供するよりも的確なサービス提供ができるようです。

 話が我孫子市の例にそれてしまいましたが、くわけんはまちづくり基本条例の制定は大変重要だと思っています。まず、その制定プロセスが、やはり所沢市の自治力向上に必ず役立つこと。どのような内容を含むかにもよりますが、実際に条例化されれば、少なくとも私は、この条例をタテにとって、条例の理念にそぐわない行政のふるまいには断固として異議申し立てを行います。(たとえばわかりやすく説明する義務など)
 
 辻山先生は、ある自治体のまちづくり条例制定委員会に委員長として加わっていた際に、ある委員がまちづくり条例の趣旨にそぐわない、あまりにも自分勝手な自説を展開したため、強く注意したところ(若干の物理力行使も伴われたそうですが)、委員長の職を解かれてしまった経験があるそうです。その自説を強く主張した委員も辞職されたそうです。

 その後、他の委員から、「本来であれば、委員長である先生が注意するのではなく、われわれ委員がたしなめるべきであった」との反省の弁が聞かれたとのこと。
 このエピソードが示すように、もし、まちづくり基本条例を制定する委員会が創設された際には、やはり、会議の趣旨やルールというのをあらかじめ確認してから議論を進める必要があるでしょう。

 また、なぜ、他の自治体がまちづくり基本条例が店ざらしになってしまっているかといえば、条例を制定した議会や市民の方々の基本条例の活用方法がいまひとつわからというのが原因の一つなのではないでしょうか。
 てっとり早く言えば、基本条例をタテに、どなたかが基本条例違反だと言って、行政訴訟を起こされると、基本条例の司法判断も含めて、その有効性が検証されると思っております。

 もし、そうした裁判がなされるならば、自治基本条例の「最高法規性」をめぐる判断が大きな論点となってくるのでしょう。

 議会の申し合わせとして、議会基本条例制定のための特別委員会を開設する方向で検討が進んでいます。議会としては、まちづくり基本条例と並行して、議会基本条例の制定も進めていかなくてはいけません。

 
 

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