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特別委員会設置と法令の自主解釈権

 先日、ある市議会の方が議会基本条例について視察にお見えになりました。
 ご承知のように、所沢市議会では、議会基本条例制定に関する特別委員会を設けて、条例案づくりを行いました。
 ところが、その市の議会事務局は、議会基本条例を作ることを目的とした特別委員会の設置はできないといわれ、特別委員会の設置は断念し、議会運営委員会で素案作りを行うこととなったそうです。

 しかし、現状では特別委員会を設置して議会基本条例制定に取り組んでいる地方議会の例はあまたあり、たとえば、埼玉県さいたま市議会は、「議会改革推進特別委員会」を、愛知県豊田市も「議会基本条例検討特別委員会」、千葉県流山市も「議会基本条例策定特別委員会」を設置していました。

 その議会の方が議会事務局から示されたとされる資料X(出典不明)と、地方自治法の該当箇所を参照すると、
 地方自治法第百九条の二 4  議会運営委員会は、次に掲げる事項に関する調査を行い、議案、陳情等を審査する。
一  議会の運営に関する事項
二  議会の会議規則、委員会に関する条例等に関する事項
三  議長の諮問に関する事項

 とあります。

 その出典不明の資料Xには「議会運営委員会の所管の一部を議会の議決で特別委員会に付託することはできない。」と断言してあります。

 また、標準会議規則(全国都道府県議長会が制定したもので市町村も準じている)においても「ただし常任委員会に係る事件は、議会の議決で特別委員会に付託することができる」と規定しているので、この文章を根拠に、「議会運営委員会の担任事務の一部を特別委員会に任せることになると、議会運営委員会が複数できることになり混乱を招きかねないので、特別委員会に付託できるのは常任委員会の所管に限定したものである」といっています。

 一方で、この資料Xでは、文章の前段で、「現在の議会運営委員会は、本来、常任委員会として設置すべきものであるから」と言っています。

 ちなみに、所沢市の所沢市議会会議規則も、(議案等の説明、質疑及び委員会付託)第36条で、「ただし、常任委員会に係る事件は、議会の議決で特別委員会に付託することができる。」となっています。

 さて、ここで、論点を整理すると、まず、議会基本条例は、先ほどの議会運営委員会の3項目に該当するかどうかという点です。この解釈は分かれると思います。大事なのはこの地方自治法第百九条の二 4項の解釈権がどこにあるかということです。

 地方分権一括法以前であれば、総務省(自治省)にお伺いを立てて、その可否を判断することになるのでしょうが、以後は、法令の自主解釈権があるのですから、地方議会独自の判断ということになります。

 この資料Xは、平成18年の地方自治法改正に言及していますから、ここまで断定的に言いきってしまえるというのはよくわかりませんが、現実運用において、「混乱」は起こらず、むしろ、議会運営委員会から切り離すことで、条例制定がスムーズに行ったのは間違いありません。

 むしろ、議会運営委員会の通常の審議事項に加え、条例制定についての審議も重なってしまうと、議会運営委員会の負担は相当なものになってしまったことでしょう。

 続いての論点としては、標準会議規則の、「常任委員会に係る事件は、議会の議決で特別委員会に付託することができる」という文章です。資料Xの観点では、暗に「常任委員会に係らない事件は、議会の議決で特別委員会に付託することができない」ということを言いたいのでしょう。これは論理的に間違っています。あくまでも、素直に規則を読めば、付託することができるのであって、できないとは規則のどこにも書いていません。この規則の解釈権も当然、地方議会に解釈権があるわけです。

 ましてや、この資料Xでも議会運営委員会は「本来、常任委員会として設置すべきもの」と言っているのですから、自主解釈権によって、議会運営委員会を常任委員会とみなせば、この部分もクリアできます。

 まったく、こういうわけのわからん文書を持ち出してきて説得するというのも、地域主権は遠いなという思いがしますが、いちいちこういったことにも論理的に反駁していくことが、議員にも求められるということです。もちろん、自主解釈の結果の結論であればそれは尊重しますけれど。

 kずれにせよ、せっかくの自主解釈権を有効に活用しましょうね。
 

 


 
 

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