« 医薬品開発の現場から | メイン | 官僚内閣制から国会内閣制へ »

みんながお客さんになってしまう社会

 今日、あるお店に行ったら、そこのお店の公衆電話で怖い顔をした男の方が、公衆電話に向かって、「責任者を出せ」とどなっていた。
 「ああ、またか」と思いました。最近はこういう方が多い。
 事情がわからないのでなんとも言えないが、きっとその方もどなたが相手かはわかりませんが、あまりにもお粗末な対応にブチ切れてしまったのだと思う。
 こういった場合、まず責任者は出てこない。いちいち責任者が出てくるほど、責任者もヒマではない。
 それぐらい苦情は多いし、手違いやミスも多い。私も本当にびっくりするような手違いやミスに遭遇することが多い。10年ぐらい前までは、「何を教育しているんだ、お宅の会社は」などと、私もどなってみたりしたが、最近はそもそも、ミスをした人も、ミスの対応者もその会社の正社員でもないことも多いらしいことがわかっているし、教育にもお金をかけていないだろうから、怒ったところで意味もないし、むしろ「安い時給でたいへんだなあ」と同情が沸き起こる程度である。
 それほどまでに日本の社会の基礎的な部分がすっかり弱ってきている。
 
 こういったどぎついクレームが、お金のやり取りの関係のある、生産者、サービス供給者と消費者間でなされるならまだわかるが、びっくりするのが、お金のやり取りではない関係でも、消費者の立場にたってクレームをつけられてしまうことである。たとえば、学校と、生徒、学校と、保護者との関係。こうした場面にもサービスの供給者と消費者の関係を持ち込んでしまう。

 確かに、学校教育も一種の行政サービスと言えなくもない。「税金も払っているのだから当たり前だ」という議論も成り立つ。
 しかし、実は、所沢市の場合でも、納税額より、受けている教育サービスの金額のほうが大きいご家庭が大半である。払っている以上の対価を得ているのが義務教育である。このことは、たとえば、私立高校や私立大学の授業料を考えてみれば容易に理解いただけると思う。

 平成18年度「子どもの学習費調査」(文部科学省)によれば、私立高校の授業料と学校納付金等を足し合わせると、約54万円。ここから類推して、義務教育も一人当たりこれぐらいのコストがかかっているとしましょう。さらに、ここに、義務教育の場合は給食費補助も加わります。給食代はほぼ原材料費見合でしか支払っていませんが、実は1食に換算すると700円ぐらいの補助が市から出ています。年間約200日として、約14万円が給食費としてかかっているので、約59万円。
 
 所沢市の世帯当たりの年間納税額(社会保険や消費税はここではいちおう除きますよ)は、平成20年度市税概要によれば、個人市民税が21万6千円。固定資産税が15万円。これに所得税や県民税を加えても、50万円には達しません。おそらく、子育て世代は、扶養控除もあるので、世帯納税額も平均より低いはず。さらに、2人以上のお子さんを義務教育で育てている世帯は、明らかに、払っている以上の教育サービスを受けていることは間違いありません。

 もちろん、税金は、教育以外にも使われています。つまり、払っている以上のサービスを受けていることを理解してください。まあ、あまりこういった何でもお金に換算して考えること自体があまりよろしくないことだと思いますが。
 そして、何といっても、教育は、教師と生徒が対等ではあり得ない。モノやサービスの供給者と消費者との関係は、消費者が優位となる垂直の関係ですが、教育は、教師と生徒との関係において先生が優位(別に先生がいばるということではありませんよ)に立っていなければそもそも教育は成り立たない。
 また、忘れてはいけないのは、教育を受ける権利と受けさせる義務があるということ。ということは、親や生徒が、単なる教育サービスの受け手として、受け身であってはいけないということ。親も生徒も学校を先生と一緒になって盛りたてていく義務があるということ。
 私の場合は、PTAや花壇整備の活動などでささやかに協力してきた。PTAでびっくりするのは、たとえば体育祭の際の自転車整理や、音楽祭の会場整理などで、お客さん気分で見に来る保護者が散見される。注意するとキレられたり、対応がなっていないと苦情が出たりする。PTAも、別に保護者に金銭をいただいてサービスしているわけではなく、あくまでボランティアなのだ。
 それでもPTAなどは、年に数回だが、こんな感じで、先生達はさまざまな苦情対応に疲れきっているのではないかと、容易に想像がつく。

 世の中をよくする一つの方法は、少なくとも義務教育の場である学校を保護者や生徒もお客さん気分ではなくいっしょになって、良くしていくこと。ここから始めなくてどこから始めるというのだろう。

 
 

 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kuwaken.net/cgi/mt/mt-tb.cgi/203

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)