国には監査請求できない?
2月1日付け日本経済新聞の月曜日のコラム 「領空侵犯」 で、千葉大学教授の新藤宗幸氏が、「国民訴訟制度を作れ」と訴えています。
私も改めて気づいたのですが、確かに、国に対しては監査請求できないのですよね。
地方自治体に対しては、お金の使い道がおかしいと思えば、監査請求ができます。その結果に不満であれば、さらに行政訴訟を起こすこともできます。
国の政策や事業によって何か被害を受けた場合には、国家賠償請求というのが可能ですし、行政処分について不服があれば、不服申立審査を請求できますが、いずれもあくまで自分自身が不利益を生じた場合に限られます。
以前にも、我孫子前市長の福嶋氏が、地方自治は、直接民主制と間接民主制の混合体制であると行強調されていたことをご紹介しましたが、まさに、地方自治体に対して、監査請求ができるという点においても、やはり、直接民主制が担保されているといえるのでしょう。
じゃあ、国会がしっかりと予算の使い道をチェックしているかといえば、実は、地方議会ほどにはきめ細かにチェックしていないようです。例えば、国の予算委員会を見てもらえればわかるように、実際に議論されている内容は、予算審議というより、政治的な議論が中心になっていますよね。
地方議員から衆議院議員になった友人とも話をしていたのですが、国会では地方議会のような執行部から提出される予算の目や節まで説明していある「歳出予算説明書」が示されないのです。
地方議会は一応それぞれの議員が予算項目の全てについて目を通すことが可能です。
「予算についてはよっぽど地方議会の方がしっかり議論しているよね」ということになりました。
当然、国の予算は膨大ですから、説明書といっても膨大な量になりますから物理的に無理なんでしょうけど。だから、時々思いついたように、会計検査院が調査をして無駄を指摘するということになります。
「地方分権の失敗、道州制の不都合」(伊藤敏安 著 幻冬舎ルネッサンス)に、京都府の山田啓二知事が2008年4月16日の読売新聞「論点」に投稿した文章が引用されています。「社会保険庁長官が地方公務員だったら、おそらく今ごろは何十億円かの賠償を求める住民訴訟を起こされているだろう。国とは違って地方自治体には責任を取る体制がある。この違いは住民から見て大きい」
そういう点からすれば、国に対して監査請求ができることも大事ですが、より多くの国の事業を地方に移管するほうがどうやら早そうです。やっぱり地方分権もとい地域主権は必要ですね。