師なくして自ずからその道に達っしてほしい(松下幸之助)
2月2日の国会の代表問で、みんなの党の渡辺喜美代表が、道州制を進めるべきとの代表質問の中でこう発言されました。
渡辺喜美氏 衆議院本会議代表質問
「江口さんの教え子である松下政経塾出身の民主党のみなさんは、立ち上がらないのですか。」
この発言は、ちょっと違和感を感じました。
私たち松下政経塾出身者は江口さんの教え子とはかならずしも言えないからです。
確かに、江口さんには、塾生に対する講義を何度もしていただいてますし、特に松下幸之助さんのお側に長年仕えたかたですから、松下幸之助さんの発言について、書かれていないことも含めて教えていただきました。
様々な形でお世話になった塾生も多いと思います。
しかし、松下政経塾には、特定の先生というのを置かない、というのが塾の理念の柱となっていますので、やはり教え子というのはちょっとどうかなと思います。
松下政経塾には五つの誓いと書いて「五誓」というものがあります。
その中に、一、万事研修の事 というのがあり、「見るもの聞くこと全てに学び一切の体験を研修と受けとめて勤しむところに真の向上がある。心して見れば万物ことごとくわが師となる」
というのがあります。
どなたか特定の方を師と仰ぐのではなく、人も自然現象も含めて万物ことごとくわが師と思えというのが塾の基本理念です。
松下幸之助さんの塾長講話録や問答集、あるいは収録されたビデオなどでは、政経塾では宮本武蔵のように、塾生には「師なくしておのずからその道に達してほしい」と述べています。
松下幸之助さんの偉大さは、幸之助さん自身は、新国土創生、無税国家、観光立国など、さまざまなアイディアをお持ちでしたが、一緒に研究していこう、一緒に考えていこうというスタンスで塾生に臨んでおり、決して、自分の作った塾だから、自分の考えを実現するために塾生は行動せよとは言わなかったことです。
なにしろ、政経塾も自分が作ったのではなく、天が「作らしめたもの」「公器である」という考え方が一貫していたことです。当然、会社も「公器」であるという考え方の方でしたので当然と言えば当然なのですが。
ときどき、「松下政経塾の先生」であったと名乗られる方がいます。確かに何度かご指導いただいたことのある方ですから、そう言えなくもないのですし、いちいち松下幸之助さんの考え方や政経塾の基本理念をご説明申し上げるのも失礼ですから、その場は「ご指導ありがとうございました」で終わるのですが、本当に親身になってご指導いただいた方ほど松下政経塾で指導いただいたことを声高に言わないような印象があります。