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 討論型世論調査の衝撃

 昨日、私の松下政経塾の先輩である、神奈川県藤沢市の海老根市長にお会いして、来年度の松下政経塾政経研究所「地域経営改革プロジェクト」のテーマについて話し合いを行いました。
 話し合いの中で、2010年(平成22年)1月30日(土)藤沢市で行われた討論型世論調査のお話をご紹介いただきました。

 藤沢市討論型世論調査

 討論型世論調査とは、無作為抽出された市民の方々から意見をうかがう方法です。無作為抽出は、所沢市でも市民意識調査などでも、郵送でアンケートを送付する際に利用されている方法です。
 ただ、藤沢市の場合は、第一段階で無作為抽出した方々に郵送で、アンケート調査を行い、続いて回答いただいた方のなかから、さらに「一日討論」の会場に直接出向いていただき、そこでの討論に参加していただくものです。

 所沢市でも、総合計画や自治基本条例の制定にあたって、公募市民による市民委員会が発足し熱心に活動をしていただいています。しかし、あくまでも公募に応じた方々に限定されています。

 海老根市長も強調していたことですが、一日討論に参加いただいた方の年齢構成が、ほぼ藤沢市の年齢構成と一致している点、特に、40代の出席者が多かったことを強調していました。

 また一日討論では、討論前と討論後に同じ内容のアンケートを行うのですが、その結果が大きく変わる項目があるそうです。

 たとえば、藤沢市の政策の重点を将来の世代と現代の世代のどちらにおくべきかという質問では、討論を経て、将来の世代を重視すべきという人が増加し、現役の世代を重視すべきという人が減少したそうです。
 一日討論の参加者には謝礼が一人5千円支払われたそうです。全体費用は500万円かかったとのこと。

 以前、出席した和光市のシンポジウムでも、和光市で、昨年9月に、和光市民まちづくり討議会の参加メンバーを無作為抽出で選出したという事例が紹介されていました。
 
 まだまだ研究の余地はあると思いますが、この方式が広がれば、極端な話、地方議会の存在意義が問われる存在になってくるだろうと予想しています。

 つまり、市政について、ある決定しなくてはならない事項を、無作為抽出で市民を選び、その方々に謝礼をお支払いして参加していただき、議論をして決定していただくというプロセスで得た議論の過程と、その結果と、同じような決定事項についての議会の議論内容と決定結果を比べた場合、本当に無作為抽出の市民と議会で、議論の内容や決定結果に、決定的な差があるかどうかが問われるということです。

 議会が、地域や団体へのインフラや補助金といった資源の分捕り合戦に終始していた時代には、そんなことは一顧だにされませんでしたが、市政の決定のチェックといったことに重点が置かれるようになった現在、そうした比較をされてしまった場合、地方議会にこれほどのコストをかける必要があるのかどうかという議論が巻き起こってくることでしょう。

 当然、私の立場としては、専業の地方議員というのは、一定程度の専門性を備えていると自負していますので、議論内容については、無作為抽出の方々の議論に比べても遜色ないとは思っています。

 そんな荒唐無稽な話があるか、という方は、いま、裁判において行われている裁判員制度について想起していただきたいと思います。決定については市民的な感覚を生かして裁判員が決定します。もちろん法律の専門家である裁判官の助言はあるわけですが。

 積極的にこの討論型世論調査をとらえるなら、議会主催でこの調査を行うということも当然ありえるわけです。そうした議論に対して、地方議員が議論の過程で助言を行いながら議論を進めるというものです。

 いずれにせよ、討論型世論調査の事例はこれからももっと増えていくでしょうし、いまのところの結論としては、地方議会も否定的にとらえるのではなく、むしろ地方議会も機能を強化し、役割分担を図っていく必要があるのでしょう。

 
 
 

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コメント

討論型世論調査の衝撃を読みました。「地方議会も否定的にとらえるのではなく、むしろ地方議会も機能を強化し、役割分担を図っていく必要があるのでしょう」という意見は、その通りですね。いずれにせよもっとレベルの高い議会にする必要があると思います。新しい発想のある議員が増えてほしいですね。

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