民営化・規制緩和で保育園待機児解消するのか?
日経ビジネス 2010年2月15日号 および、週刊ダイヤモンド 2010年2月6日号で、それぞれ「子ども倍増計画」、「「保育園』の不合理」というタイトルで、記事が掲載されていた。特に保育園についての記述は驚くほど似通っており、共通して紹介されていたのが、株式会社で、保育園を経営する、JPホールディングス社である。
使っている表も共通のものがあり、共働き等世帯数の推移が掲載されている。
日経ビジネスでは「株式会社が悪なのか」、週刊ダイヤモンドでも「株式会社はすべて悪なのか」と小見出しまでそっくりだ。まるで、何かの悪い冗談か、キャンペーンでも展開しているのかと思ったほどだ。逆にいえば、社会福祉法人は既得権益で抵抗勢力であり、この抵抗勢力を打破すれば、待機児問題が解消するかのような印象をどちらの記事も与えている。
しかし、なぜ株式会社の参入が忌み嫌われるかといえば、2008年に、株式会社エムケイグループが運営する保育園「ハッピースマイル」など二十九施設がいっせいに閉鎖して大混乱をきたしたからだ。
当然、この両特集ともそのことは一切触れていない。
そして一方的に一部の社会福祉法人の失態を必要以上にあげつらっている印象だ。
社会福祉法人は、NPOや株式会社に比べて、設立のハードルが高い。だから、逆に撤退しにくいという側面も持つ。特に、社会福祉法人はもし法人解散の場合、株式会社と違って、基本財産は没収されると私は理解している。(間違っていたら指摘して下さい)
それに社会福祉法人の経営問題を指摘するなら、高齢者福祉の社会福祉法人の問題点を指摘するべきだろう。そのほうが、そもそも規模も大きいし、利益率も平均して保育園を運営する社会福祉法人に比べて高い。
そもそも待機児問題の本質は、社会福祉法人の硬直性にあるのではなく、絶対的に保育にかける予算が少ないことにある。そうした本質のすり替えをしたところで、現実に待機児は解消しない。不思議なことに両特集記事ともに、いかに日本が子育てにお金をかけていないかについても報告している。たとえば、週刊ダイヤモンドでもOECDのデータで、就学前教育における教育支出に占める公費負担の割合の図表を掲載している。日本は、高いといわれるスウェーデンやフランスには比べるべくもなく、米国の77.6%韓国の46.3%より低い、43.4%である。日経ビジネスでも、「高齢者関係給付費」と「児童家庭関係給付費」の変化を表す図表を掲載している。ちなみに、平成19年度、前者は6兆3565億円で、社会保障費全体に占める割合は、69.5%、後者は3561億円で、保障費全体に占める割合が、3.9%。
「高齢者関係給付費」は「児童家庭関係給付費」の実に17.85倍である。
これじゃ、以前から指摘している「子育ての同盟罷業」が起こるに決まっていますよね。