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 西尾勝先生「政権交代と地方自治」で質問する

 本日は、私も会員の自治体学会 自治最前線フォーラムが東京秋葉原で、午後ありました。
 昨日が政経塾のシンポジウムで、大臣や知事、政令市などの市長のお話を聞き、今日は日本行政学の泰斗 現在は、東京市政調査会理事長の西尾勝先生のお話です。先生の、行政学の本はよませていただきましたし、かつて政経塾で行政学を勉強しようと、森田朗先生をおよびした際にテキストに指定されたのが、西尾先生の「行政学の基礎概念」というえらく難しい本でした。第10章自治を題材に勉強しましたが、森田先生の解説なくしては何が書いてあるかさっぱりわかりませんでした。
 
 さて、本日は、西尾先生は、「政権交代と地方分権の動向」というテーマでの講演でした。
 Ⅰ 「第2期分権改革」の基本的な性格 Ⅱ政権交代で何が変わるのか ということで、主に、先生の視点で最近の動きを整理し、先生のご意見も交えて、ご講演いただきました。

 講演後、早速私が、怖いもの知らずで、一番手で質問です。
 昨日のブログでも書かせていただきましたが、なんといっても「地域主権」という用語表現がはたして適切なのかどうかという切実な問題を抱えていますのでその点について質問です。

 くわけん「私は、地域主権というのは、はたして言い切ってしまっていいのかまだ整理がついていないが、先生は、地域主権という言葉をどのようにとらえていらっしゃるのか。ただ、国の権限を地方に分ける分権というのも大事だが、地域が主体的に権限を行使していこうというその意味には共鳴しているので、何か別のいい表現はないか?」
 
 西尾先生「地域主権をゆくゆくは連邦制を構想しているということであればそれはありえる。しかし、そういう構想なしに、地域主権ということは、主権が日本国民から地域に移行してしまうということになるので、この表現は好ましくない。だから、私は、地域主権戦略会議には参加しない。2番目の用語については地方分権でいいと思っている」とのお答えでした。
 
 あくまでも大意を要約したので、細かい部分は間違っているかもしれませんが、私は以上のように受け取りました。

 松下幸之助さんは、「廃県置州で新たな繁栄を!」といわば、道州制を提唱していました。じゃあ、松下幸之助さんが、連邦制を指向していたかといえば、それはちょっと違うと思っています。
 昭和43年PHP7月号での、論文、「廃県置州で新たな繁栄を」では、「国防や外交、治安や教育行政、基本的な国土建設といったものは、各州ごとにやるより中央政府が行ったほうが効果的である」といっています。(昨日ご紹介した、湘南宣言でもその一部を引用させていただきました)

 おそらく、主権という言葉ををどうとらえるかにもよりますが、やはり、国防や外交が中央政府にあるというのは、ちょっと連邦制とは違うのかなという感じがします。
 いずれにせよ、地域主権といった場合、主権という言葉もそもそもは西洋から輸入した言葉ですから、英訳で言えば主権は「sovereignty」ですが、地域主権といった場合の地域主権は、地域が主人公となって、あるいは主体となって権限を行使する、といった意味合いが強いのではないかと私は思っています。
 ですから、地域主権の場合の主権を英訳すると「autonomy」にニュアンスが近い印象です。地域主権推進法も、地域自律(自己決定)推進法という表現の方がいいのかなとも思うわけです。

 さて、これからおそらく、この地域主権という用語をめぐって、内閣法制局の判断がなされるわけですが、民主党は内閣法制局が憲法判断を下すことについて、忌避感を示しています。このことは、最近知ったのですが、要するに、「民主主義」と「立憲主義」との対立ということになるのでしょう。

 立憲主義と民主主義 阪口 正二郎 要約

ごくごく私の生半可な理解でいえば、民主主義はルールを作るということ、立憲主義はルールを判断し、守るということになり、そのルール判断は民主主義側、つまり政治側にあるのか、それとも、内閣法制局も含めた広い意味での司法部門にあるのかというこれも一種の権力闘争にあるわけです。原則的には3権分立ですから、そんなことできるかどうかはわかりませんが、この地域主権推進法は、憲法違反だから訴える、となった場合司法はどういう判断を下すのかなというのは興味がありますね。

 国民も、なんとなく道州制に対してはそれほど拒否反応はないと思うのですが、やはり連邦制となると、それは国民合意を得ているとはとても思えませんし、西尾先生も言っていましたが、民主党政権のマニフェストには、道州制も連邦制も書かれていないのですから、民主主義的プロセスからいっても、それはちょっと無理筋かなという気もするわけです。
 
 いずれにせよ、法律用語としての地域主権というのはなかなか難しい問題を抱えているのですが、政治的スローガンとしての地域主権については私もその意図は十分わかりますので、ちょっと悩ましい今日この頃であります。
 

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