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 泥棒が番犬を選ぶ?!(包括外部監査が継続に)

 今回の所沢市議会定例会において、包括外部監査制度を設けるための条例が、わが会派も賛同して継続審議となりました。このことが、なぜか、マスメディアの皆さんを刺激したようで、久方ぶりに、ある中央メディアの記者の方も、わが会派控室にいらっしゃいました。

 その記者の方の見立てによれば、そもそもこの包括外部監査制度が気にいらない職員(制度推進を進めている職員が気に入らないということか?)の一部が、議員をそそのかして継続にさせたという。
 議員も随分と低く見られたものです。

 わが会派が継続に賛成した、というより、諸手を挙げて賛成とならなかった理由はいくつかあります。

 まずは、表題にあるように、包括外部監査には、それほど期待ができないという点にあります。

 「泥棒が番犬を選ぶ」とは、前神戸大学教授で、行政法の大家である、阿部泰隆先生の著書「行政法解釈学Ⅰ」に書かれている言葉です。阿部先生は包括外部監査制度のことをあまり評価していません。

 どういうことかといえば、監査人の選定を、監査を受ける所沢市が選任するからです。
 また、所沢市では、埼玉県公認会計士協会から推薦をもらうと説明していますが、これは賛成した会派の議員も言っていたことですが、別に埼玉県に限定することもないし、すこしでも、泥棒が番犬を選ぶ仕組みに問題意識があるなら、公募という方法もあるはずです。
 包括というから何か、全ての会計をトータルでチェックする印象をもたれる方もいるかもしれませんが、実態はその逆で、ある特定のテーマについて扱うのが包括外部監査です。

 執行部側にはどういう領域を監査対象にするか腹案があるようですが、実際に決めるのは選ばれた監査人です。しかし、現実問題として監査人は、発注者側の意向を尊重することになります。

 そもそも、外部監査の狙いは、なかなか止めたくても止められない事業に対して、外部の評価を言い訳に止めることにあるようです。内部向けに、事業の改廃を説得するために、わざわざ1500万円以上のお金をかけるのなら、そんな余計なことはせずに、やめるべき事業はさっさとやめればよいだけのことともいえます。

 また、所沢市は、事務事業評価に外部評価を取り入れていましたが、執行部側に都合の悪い結果がでたせいか、事業をやめるのではなく、外部評価そのものを止めてしまった過去があります。もし、万が一監査人が所沢市がやらせたい監査対象とは違った対象を選んでしまった場合、監査はなかったことにされてしまう可能性もあります。

 現実に、包括外部監査はあまり人気がなく、法定でしなくてはならない政令市や中核市を除くと、全国でも14市しか実施しておらず、また、香川県丸亀市のようにすでに止めてしまった市もあるほどです。

 まあ、それほど大きな成果を期待はしていないのですが、わが会派としては、賛成する予定で委員会に臨みました。

 しかし、執行部は、「今回の議案と中核市は直接結びつくものではない」と答えていましたが、一方で委員会では、「これまでも市長からもかなり踏み込んだ中核市移行についての話があり、私どももいずれ議論する課題であると思っている」「平成23年度からの第5次総合計画にも掲げられている自立都市という言葉は限りなく中核市に近い概念であるという認識をもっている」「今後、積極的な議論をしていく必要があると認識している」などの見解が表明されるに至って、包括外部監査を、中核市への一里塚として提案いるのではないかという疑念が高まってきました。
 
 そもそも、第5次総合計画の素案の段階にすぎない自立都市という概念は、まだ、まったく議会の議決としてもなされていないわけで、この包括外部監査の議論を進めてしまうことは、中核市を間接的に認めてしまうことにもなりかねないという判断に傾いていきました。

 つまり、包括外部監査は、中核市では必須要件です。たとえば、市長が今後中核市の議論を提案した場合、その理由の一つとして、「包括外部監査についても議会のご議決をいただいて進めているところでございます。」と言ってくる可能性があるのです。

 中核市移行について、当麻市長は、前斉藤市長のことを引き合いにだして、「前斉藤市長も市長会で提言してきたので、積極的に取り組みたかったのではないか」といったニュアンスの回答をしました。

 これにはちょっとびっくりで、例えば、私の平成17年3月定例会での質疑を見ていただければ明らかなのですが、私が中核市昇格についての見解を尋ねたところ、斎藤市長は「仮に当市が合併を考えた場合、私は、中核市ではなくて政令指定都市を目指すべきだろうと思っておりまして、政令指定都市を目指そうというのが考え方の1つとしてはあると思うんです」と答えています。

 そういった事実でないことまで持ち出して強弁することを見てもよっぽど注意してかからないと、この包括外部監査は、中核市へむけた打ち上げ花火となる可能性が十分あるわけです。 

 私は、所沢市が、より権限の多い中核市になることはそれほど反対ではないのですが、以上のような点からも、やり方がちょっと姑息な感は否めなかったのは事実です。

 正々堂々と、総合計画の議論の中で中核市昇格を議論すべきなのだと思います。

 いずれにせよ、予算は否決しているわけではないので、もう少し精査をして、特に、包括外部監査と中核市の議論は切り離して考えることを再確認しないことには、なかなか議論が次に進めないし進めてはいけないと思った次第です。

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