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 大森彌先生「これからの地方自治と議会の役割」②

 前日の続きです。
 
 橋本大阪府知事の改革についての論評がありました。
 ます、橋本知事の大阪「都」構想について。論理的には、あり得る話である。つまり、都道府県制度において「府」を「都」に名称変更することは可能。ただし、橋本大阪「都」構想は、大阪「都」に大阪市などの権限を吸い上げることから、地方分権改革に逆行する動きである。どれだけ、東京都下の23区が自立と分権を求めて苦闘してきたのか、その歴史を知らないのか、知っていても敢えてそうしているのか。
 おそらく最終目的は、東京都がそうであるように財源確保にあるのではないか。大阪「都」になれば、地方住民税の法人税分、都市計画税、固定資産税が大阪「都」のものになる。
 
 地方自治法改正に関して、これから地方議会の存在意義が問われる案件

 平成22年3月 地方自治法改正案

 議員定数の上限廃止。議員数も何人がふさわしいか、自分たちで決めてくださいということ。つまるところ、議員の地位や報酬などを含めて、自治体ごとに自己決定を促されることになるのではないか。
 議会事務局の共同設置。総合計画の基本構想策定の義務化を廃止。いずれも地方議会改革を促す方向性の話。特に民主党は地方議会改革に狙いを定めている。

 地方議会の存在意義を高めていくためにも今まで以上に情報公開と住民参加を進めていくしかない。
 議会基本条例などかつては考えも及ばなかった。それが全国的に広がっていることは、大変結構なこと。

 最後の質問コーナーにて、私も大森先生に質問しました。

 くわけん「議員のボランティア制についてどう思いますか?」
 大森先生「戦前の議員はボランティア制であった。ボランティアとなれば費用弁償を行うことになる。しかし地方自治法203条において議員報酬を払うことを義務付けているので、報酬ゼロはありえない。あるとしたら限りなくゼロに近い金額とすることになる。いずれにせよ日当制ということは、議員は議会活動以外は何もしていないということを言われているようなものである。本当にそれがいいのか?また、ボランティアということになれば、益々素人がやることになるので、執行部との対抗上若干の疑問が残る。」とのことで、明確に否定も肯定もしないという大森先生にしては歯切れの悪い回答でした、以前も報告いたしました通り、西尾勝先生は地方議会については、ボランティア制を明確に指向しているようでした。

 議会が予算案提出権を持つことについては憲法改正の必要がないので、それぐらいのことをやっていかないと、なかなか首長の権限は変わらない。首長の権限が強いということは、これはとりもなおさず集権的な体制が残るということなので、本当の地方分権の実現は議会機能の強化であるとのことでした。


 参考 今次の地方自治法改正案において、実は、平成21年の最高裁判決で、解職請求者に公務員(農業委員)はなれないとする地方自治法施行令が法律違反であるとなったための改正条項が含まれています。住民の権利を法律を超えて過度に制限する施行令はいけませんよという最高裁判決は、歓迎です。

 最高裁判決文

 この中で、裁判官宮川光治,同櫻井龍子の補足意見に、間接民主制と直接民主制との関係について述べている部分があるので、引用しておきます。

 「地方行政の基本は間接(代表)民主制であるが(憲法93条,地自法89条,139条),住民が主権者として選挙によって代表者を選んだ後,代表者の意思と住民の意思がかい離するという事態が生ずることがある。そのような間接民主制の欠陥を直接民主制の原理により補完するという直接参政制度が地自法において一定の範囲で設けられている。」

 引用終わり


 

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