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 松下圭一著 「自治体は変わるか」に学ぶ①

 先日、本屋で、松下圭一先生の岩波新書「自治体は変わるか」を手にとる機会があり、早速購入しました。
 松下先生のご著書について、最近のものはなるべく購入して読むようにしているのですが、この本はまだ読んでいませんでした。

 読んでみて、第2章「自治体議会に改革構想を」が衝撃的な内容でしたので、改めて内容をご紹介させていただきたいと思います。

 まず、驚いたのが、この本が1999年に発行されているということです。しかし、この段階で、議会基本条例についての骨格が構想されているということです。遅れること10年にしてようやく、所沢市議会も松下先生の論旨に従えば、地方分権一括法に対応できたということになります。

 同書69p 「<市民の議会>となるには、これまでとは、逆の考え方をすべきです。それには、まず従来の「議会会議規則」ではなく、自治体の≪基本条例≫あるいは、「議会基本条例」のなかで、招集、組織、会期、公開、参加などを規定することを考えるべきです。」
 とここで、「議会基本条例」の制定、もしくは自治基本条例への議会の位置づけを提案しています。

 つづいて
 「そのとき(基本条例ができれば:筆者注)、議会は、長が市民会議をおこなっていると同じく、本会議ないし全員協議会の主催で市民会議をひらくことができるではありませんか。」「また委員会ないし委員会協議会が直接に市民会議をひらいてもよいでしょう」
 この部分が、議会報告会の実施の構想へと結びついたのではないでしょうか。
69p~70p
「みずからの職業をとおして専門情報ないしひろく政策情報をもつ主権市民を、いつまでも「傍聴」あるいは「陳情・請願」どまりにしていること自体、議会の時代錯誤性をしめしています。」

70p
「議会は、長・行政職員の出席なしに独自に本会議あるいは委員会で〈自由討議〉をおこない、最終的には長との合意が必要となりますが、政策・条例の立案を積極的におこないうるではありませんか。」
「議会は、長・職員の出席を限定して、「自由討議」を中心に自立した運営にしたいと思います。」
「議会は長の提出議案のシャンシャンではなく、おおいに自由討議でモメルべきなのです。」
ここにおいて自由討議の重要性や長や理事者の出席抑制が提起されます。

74p
「議会は、ひろく傍聴や中継に開かれるだけでなく、新しい議会慣行あるいは基本条例の策定によって自由討議を多くし、そこに市民参加の手続をとりいれ、議会の多様な情報・意見さらには政策構想をふくめて、新聞方式から電子方式などいずれをとわず、議会独自に公開すればよいではありませんか」
市民参加の手続を積極的に取り入れることを促しています。

これで、東京財団が重視する議会基本条例の3点セットがすべて登場します。自由討議、請願者への説明機会の付与、そして議会報告会です。

閉会中の文書質問について
74p
「自治体議会の自立性をたかめるには、党議拘束をはずした議員間の自由討議中心に議会を運営することも不可欠です。そのため、議長は経由しますが、議会慣行として長への文書質問を多くしていく必要もあります。これは、「説明請求権」ないしはひろく調査権の運用、あるいは情報公開の議会慣行とみなせばよいわけです。」

行政の情報公開に対する未熟さについて
「これにたいする文書による説明があいまいな言葉で不明瞭・不十分なときには、何度も分sによ質問をくりかえすことで、その自治体の職員水準もたかまるでしょう。政策責任も具体的にはっきりします」
「行政機構自体、まだ情報公開に熟達しないのみならず、マップ化やグラフ化なのの公開技術の革新も充分ではありません」「各自治体それぞれ特性を持つ財政・財務状況の緊迫については、それぞれの自治体で市民、議員、あるいは職員に早めに公開しなければ手遅れとなってしまうではありませんか。」


最後に
「前略≪基本条例≫をつくり、〈市民の議会〉となるよう各議会がそれぞれ自由な工夫をおこない、これまでの『標準』や自治体議会解説書などとはサヨナラすべきでしょう。」

つづく

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