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議会改革について ⑤

しかし、そういったルールの体系で不足していて、肉付けで足りない部分が、住民と議
> 会との関係だったといえるでしょう。ともすれば議員は、自分達は普段から住民と接し
> ているので、私達こそが住民の声を代弁しているのだと言う人もいます。しかし、現実
> には議員は首長の場合と違って、住民とのつきあいは自分のテリトリーのしかも、支持
> 者が中心となります。つまり偏っているのです。一方で議会においては正式なしくみと
> して住民の声を取り上げるしくみを整えてきませんでした。最も顕著に表れているのが
> 、誓願や陳情者に対して趣旨説明の機会を公式的に付与してこなかったことです。所沢
> 市の場合は、誓願などの審議を担当する委員会で、一旦休憩として、請願者から誓願趣
> 旨の説明をしていただき、簡単な質疑応答もさせていただいています。しかし、本来な
> らば請願者を正式に委員会に参考人として及びして、議事録にも残る形で趣旨などをお
> 聞きするのが本来のあり方なのでしょう。また、傍聴の制限や傍聴者に対して資料を提
> 供しないなど、主権者たる住民に対して冷たい対応でした。その点、執行部の方がはる
> かに進んでいます。条例制定に際してはパブリックコメント制度で意見を聴取を行った
> り、そもそもの立案段階で、市民参加の方法を取り入れるケースもあります。
> 地方議員は、国会議員と違い、代表としての権限に制約があります。一番わかりやすい
> 例としては、国会議員は任期中国民からリコールされることはありません。しかし地方
> 議員は住民からリコールされる制度が整っています。それ以外にも、条例提案権や住民
> が直接決定する住民投票の制度もあります。つまり地方自治は直接民主制と代表民主制
> の混合型という形をとっています。ですから市民の意見を常に取り入れる必要があるの
> です。また、憲法第15条に「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者で
> はない」と書かれています。この公務員には当然公選職の地方議員も含まれています。
> また、首長は、住民全体を相手に仕事を進めますから、自分の支持者でない方からもタ
> ウンミーティングなどで、意見を聴取したり、面会したりします。以上のような点から
> 住民の議会への参加は当然の権利といえます。この権利を保障する条項を盛り込み、あ
> らたに議会と住民とのコミュニケーション回路を太くしようというのが議会基本条例の
> 一つの原則です。東京財団が、議会基本条例に必須の項目として3項目をあげています
> 。一つは、先ほどもふれた、誓願・陳情者に議会での意見陳述の機会をあたえることを
> 条例で保証していること。2つめは、住民に対して議会での活動を報告し、住民の方々
> から議会に対するご意見をお聞きする議会報告会を開催すること。3つめは、議員間の
> 自由討議の機会を保証すること、となっています。前二者はまさしく、議会と住民との
> 関係の再構築に関する項目です。三番目の自由討議ですが、これもこれまでの地方議会
> では、議会といいながらほとんど議員同士の議論がなかたということに問題があります
> 。なぜこうなってしまったかといえば、地方議会が擬似議員内閣制ともいうべき、与党
> 野党構造が会派にあったためといえるでしょう。所沢市議会でも議会基本条例制定を機
> に、委員会において、委員が発議し、委員長が認めた場合は、委員間での自由討議を行
> えるように制度改正を行いました。自由討議は、きわめて理にかなった方法であり、む
> しろこれまでこうした自由討議ができなかったことが、今となっては不思議なくらいで
> す。しかし、この自由討議も既存の法令や条例、規則からみれば「やってはいけないと
> 」は書いてはいません。ではなぜできなかったかといえば、「やっていいと書いてない
> から」と答えざるを得ません。ですから、議会基本条例に「やっていい、いやむしろ積
> 極的にやるべきだ」と書き込むことが重要であり、だからこそ議会基本条例が必要だと
> いうこともご理解いただけることと思います。所沢市議会でも、長年にわたり懸案であ
> った、一般質問などにおける一問一答方式が、議会基本条例制定により、ようやく導入
> されました。本当は法令や条例に書いてないことはできるのですが、やはり書いてない
> とできないという圧力も議会内部では強く、逆に書いてあれば書いてあることに関して
> は積極的に進めていこうということになるのです。所沢市議会基本条例では、議会報告
> 会の開催を義務づけました。議会報告会は、東京財団の議会基本条例を評価する3項目
> にも記載されていた事項です。早速、本年度から年4回、議会報告会を開催することが
> 決まり、すでに2回実施しました。住民の皆様との関係性の強化という点で言えば、条
> 例制定過程での、意見提案手続きも実施しました。現在100以上の地方議会で議会基本
> 条例が制定されつつあります。所沢市議会にも、連日全国各地から議会基本条例制定に
> ついての視察の方々がお見えになります。しかし、議会基本条例についても、内容は様
> 々です。先ほども述べたように、様々あってしかるべきで、なぜなら骨格の法令や条例
> に対して、どこの部分に肉付けするかの判断はそれぞれの自治体議会ごとに違っていい
> からです。ただ、せっかく作っても、その後議会に変化がないという議会も少なからず
> あるようです。所沢市議会の場合、市民の方々に積極的にご意見をいただきながら条例
> 制定に努めました。その中でよく言われたのが、「こんな立派な条例を作って本当に実
> 行に移すのか」ということでした。そういうこともあり所沢市議会では条例の実効性を
> 高める努力を行ってきました。その結果、平成22年度に日本経済新聞が実施した「全国
> 議会改革度調査」で全国8位となりました。この結果については実態とは乖離している
> というご批判もいただきましたが、基本的には議会基本条例を制定したことと、制定し
> た内容を着実に実行に移している点が評価されたのではないかと分析しております。議
> 会なんていらないといわれないよう、議会基本条例を制定していない議会では、是非と
> も条例制定をしていただくこと、制定後の議会では、さらに条文の内容を実現すべく努
> 力していただきたいことを願って、今日のお話を終わりとさせていただきます。

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