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会派「翔」マニフェストの評価について⑪

論点を探すための情報源
自分の経験だけでは、なかなかマニフェストの項目を見つけ出すことは難しい。そういう場合にどこから論点を見つけてくるのか。最も手っ取り早いのは、前回もご紹介した、各会派の政策提案である。ただ、政策提案は、会派でホームページのサイトを持っていて、そこに政策提言が掲載されていれば、入手は容易であるが、そうでない場合は、地域新聞のバックナンバーを丹念に当たると、提言全文が掲載される場合が多い。なぜなら、ほとんどの会派が、市長に面会し、直接政策提言を手渡すからだ。この際に、政策提言を市長に手渡すことが記事となる。全国紙の地方面ではほとんど記事として扱われることはないが、地域新聞では、提言全文も含めて報道される。こうした媒体を通じて政策提言を入手することができる。
選挙公報を発行している自治体では、選挙公報も重要な情報源となる。過去の選挙の公報を手もとに持っている方はなかなかいないと思う。どこで調べるかといえば、所沢市の場合では、概ね4年に1回のペースで選挙管理委員会から発行される選挙の記録である。この記録に、所沢市の場合は市議会議員や県議会議員の選挙公報が掲載されている。私も改めてこの原稿を書くために過去5回分の選挙公報を見てみたが、どういった候補がどのような公約を訴えてきたかを見ていくことで、論点の変化をつかむことができた。ついでに、どの候補が当選し、どの候補が涙をのんだかを知った上でさらに内容をチェックすることも重要だ。こうした選挙の記録集がすべての自治体で発行されているとは限らないが、各自治体の選挙管理委員会では過去の選挙公報を保管してあるはずなので問い合わせて見ると良い。
また、行政の公聴公報情報も住民ニーズの宝庫である。基本は、住民意識調査である。一定規模の自治体であれば、大概、毎年1回住民意識調査を行っている。
特に政策の優先順位付けがアンケート項目に入っていることが多く、自分の思い込みの優先順位と住民意識との違いを確認することができる。
意外に参考になるのが、自由意見が掲載された部分である。所沢市ではA4で20ページの分量の声が掲載されている。
所沢市の場合、自由意見の記述部分が、地域ごとに分かれて掲載され、地域ごとの住民ニーズがわかるようになっている。自由意見を読んでみると、相反する立場の主張に出くわすことがある。ある方は駅前整備を早く進めてほしいという意見を寄せている一方で、別の方は、開発しないでほしいという意見を寄せている。
私も学校グランドを芝生化してほしいという要望をいただいたが、学校施設開放制度を利用して、少年野球の練習をしているグループにとっては、芝生化は歓迎されない事実を後で知った。マニフェストに掲載するかどうかは別として、対立する論点については聞かれることも多いので、あらかじめ自分の立ち位置をはっきりさせておくと良い。
所沢市では、「市長への手紙」という制度がある。「市長への手紙」では、住民の方々の市に対する要望や苦情などを市長に直接訴える制度だ。平成20年度実績で、年間814件が寄せられている。
私も議員になる前に、この制度を利用して、ある体育施設の全面禁煙化を要望したことがある。2ヶ月ほどして、手紙を出したことを忘れたころに返事が返ってきた。新人候補の場合であれば、実際に自分が実現すべきと考える項目について、市長の手紙を出してみるという方法も有効であろう。現時点での市の考え方を知ることができる。市長への手紙に寄せられた内容も「広聴・相談のまとめ」として報告書にまとめられている。ただ、要望項目のみの公開なので、例えば、「図書館について」という要望だけだと、どういった内容なのか、詳細をつかむことはできない。所沢市の場合、「広聴・相談のまとめ」として所沢市のホームページにも公開されているので、皆さんの自治体でもこういった報告書があれば、参考にすると良い。
年4回、議会定例会ごとに発行される、市議会報などの内容も参考になる。優先順位からすれば、市議会報が発行されている自治体では、市議会報がリスト作りの参考資料の筆頭である。過去少なくとも4年分の市議会報の特に議員の一般質問とその回答について目を通しておく必要がある。そうすれば、どういった住民要望があるかどうかの大枠が確認できる。自分のリストに含まれている項目が既に一般質問されている可能性も高い。そして既に問題が解決されている、論点として取り上げても意味がないことが明らかになる。
ただ、所沢市議会報に限らず、すべての一般質問が議会報に掲載されているとは限らないので、より深く広く一般質問の内容を調べる場合には、議事録検索を利用する。ただし、幅を広げすぎると収集がつかなくなるので、関心のある項目に絞って検索をしたほうがよいだろう。
議会報は自分の地域の議会報だけでなく、自分の地域と人口や産業構造が類似した地方自治体の議会報にも余裕があれば目を通しておくと新たな発見がある。自分の地域と類似した地方自治体は、主に人口で判断する。さらに財政状況や面積、都市部と農村部の割合などで類似した団体を選定する。私も、議会質問で類似団体の条例や政策をチェックすることが多い。類似団体は、総務省自治財政局財務調査課が『類似団体別市町村財政指数表』という資料を毎年作成しており、そこの団体の分類から自分の住んでいる自治体の類似団体がわかる。所沢市の場合、以前の分類から言えば、埼玉県川越市や神奈川県藤沢市などが類似団体であった。これらの市と所沢市も共通する課題も多いため論点を探し出す参考になる。

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