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「常磐道でまちづくり」懸賞論文大賞⑥ おわりに

改めて言うまでもなく、最近の日本を取り巻く社会経済状況は不確実性を増している。そうした環境下では、地域の成長発展のための確たる方程式は一通りではない。となると様々な知恵と情報を集めて、地域は環境変化に対応していかざるを得ない。情報化社会を迎えて、情報格差はなくなりつつあると述べる識者もいるが、むしろ、情報化社会、知識社会になればなるほど、情報を運ぶ「人」の重要性が増してくる。本当に必要な情報や知恵は、インターネットに乗ってやってくることは決してない。生身の「人」が運んでくるのである。「仕事」を持ってくるのではなく、地域に惚れ込んだ「人」を持ってくる。そうすれば「仕事」はあとからついてくる。それが、「人」誘致モデルである。
 もちろんそうした「仕事」は大規模誘致企業に比べれば、売上高などの規模はそれほど大きくなることはないだろう。しかし、確実に雇用を生み、人口を定着させる。環境変動に対しても、円高など国際的な要因で立地が左右される工場などに比べて安定性も高い。

 「高野山の午睡(ひるね)」という言葉が高野山には伝わっているそうだ。かつて文化の中心地であった高野山では、午睡をしていても、日本各地の情報が集まったという。とにかく、「人」が集まってこないことには知恵も出ない。そしてそうした外からの「人」を集め運んでくるのが、道路である。最近、高速道路の経済効果の測定が盛んであるが、知識社会においては、道路を整備しただけ一定の効果が得られるという仮定こそが誤りである。情報や知恵、そしてそれらを載せた感度と解釈力の高い「人」を地域の創意工夫によってより多く集めることができれば、投入コストは十分活きてくるし、それに失敗すればいくら低コストで道路建設を行っても無駄な投資であったとなるであろう。
 本論では「人」誘致モデルに焦点を絞って論を進めたが、企業立地モデルもかつてのような絶対的な地位は失ったが、いまだ有用性は失われていない。むしろ「人」誘致モデルと相互補完関係にある。
 地域が環境の変化に柔軟に対応するためにも、一つのモデルではなく、いくつかのモデルをおりまぜてポートフォリオを組んで地域開発を行う必要性は益々高まっていくだろう。そうすることで、変化の激しい時代への対応力も高まるであろう。本論がそのための一助となれば幸いである。

(終わり)
 

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