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2005年02月16日

オランダ ユトレヒト市 ライツェ・ライン地区開発について

 ユトレヒト市西部の、新規住宅商業開発地域であるライツェ・ライン地区を訪問した。
 まずは、現地案内所を訪れ地図や英語版パンフレットをいただき、オランダ語版のいくつかの書籍を購入する。その後、現地見学用の地図を手がかりに、実際に現地を視察した。
 ユトレヒトは、2015年までに、3万戸の住宅をこの地域に建設し、8万人がここに住むことを見込んでいる。そのため、まだ、建築途上の地域も多かった。
 以下、英語版のパンフレットと、現地視察の様子を元に、ライツェ・ラインについて報告する。 この地域は、これまでのやりかたとは違ったデザインプランで計画されている。住区(neighbourhood)ごとにデザインと設計がされるため、都市計画家や建築家は新しい開発にあたって、既存の住区の状況に合わせてデザインすることができる。つまり、あらかじめ、全体計画を決めて、分担して取り組むのではなく、一つ一つの住区ごとに段階的に作っていき、その結果を見ながら、次の住区は計画できるというやり方をとっているようだ。
 また、当然ながら、住区ごとに一定の調和をたもちつつも、それぞれ個性の異なるデザインがなされるため、結果的に個性的で多様性のある住空間が生まれることを目指している。 実際に、見てみるとなるほど、おおよそ30軒程度の住区のまとまりごとに、まったく建築様式が異なっている。しかし、一方で、それぞれの住区同士の調和も保たれている。
 さらに、イラスト入りのオランダ語版の本を見ながら想像する限りでは、これまでの歴史上の住区の様々なパターンを研究し、その構造を現代に再現しているようである。 典型的には、住区同士、あるいは住区内に、路地裏を敢えて作り込んでいたりする。その路地裏を通って児童公園にたどり着くようになっている。 それ以外ににも、様々な歴史上の住宅や住区構成のパターンをとりこんでいるようだ。  ライツェ・ラインは、単なる住宅街ではなく、ビジネス街も中心部に計画しており、70万平方メートルのオフィス街区を設置し、40,000人がそこで働けることを目的としている。 また、同時に、この地区のインフラストラクチャの整備も同時に進めており、高速道路へのアクセス道や、ユトレヒト中心部へ向かうための3つの橋も建設されている。まだ、新しく2つの駅も新設する予定だという。
 ライツエ・ライン地区の更なる特徴としては、環境に配慮した、持続可能な地域を目指している点があげられよう。 なるほど現地を見てみると、あちこちに、堀が掘ってある。雨水は下水管に流さすに、この堀に流すようになっている。ちょうど乾燥地のワジのように、降雨時にはこの堀に水がたまり、降雨がないと、涸れた堀となる。このワジがちょうどフィルターの役目を果たし地中に滲みこむ水を浄化する。また、一定の雨水が地域内でとどめられるので地下水位を一定に保つ効果も期待できる。 この地区では中水利用も計画されており、貴重な飲料水を25%節約できるという。
 この地域の開発におけるユトレヒト市の役割としては、計画を達成するための開発ディレクターとしての立場におかれている。例えば事前の条件決定や、土地の購入、土地の供給、計画の先導、中央政府や民間デベロッパー、都市計画家、建築家との交渉などを行うことなどである。
 この計画の完成によって、新たに80,000人の人口増を促すことを目的にしているという。自治体がこれほどのリスクを抱えて新たな事業に取り組むというのは、特に最近の日本では例をみない。ちなみにユトレヒト市はこのライツェ・ライン地区の完成によって8万人増えて、所沢市と同じ人口33万人となる。
 街づくりといっても、最近の日本では、トンネルや道などの基盤インフラ整備と何らかの開発行為への規制及び誘導というのが、自治体としては精一杯である。しかし、このライツェ・ラインでは、より積極的な役割を自治体が果たそうとしている。所沢市でもいくつかの区画整理事業が進行中であるが、街のデザイン計画まで含めた形で自治体が関わるというやり方を検討してもよいのではないだろうか。ただ、このライツェ・ラインのような大枠の計画は決めても、時代の変化に合わせて計画も柔軟に組み替えていくというやり方は、今の日本では相当困難を伴うだろう。
                                      以上

2005年02月15日

オランダ ティルブルグ市の廃棄物処理収集

  ティルブルグ市の一般廃棄物を収集する会社BAT(BRABANTS
AFVAL TEAM)を訪問して、ティルブルグ市の廃棄物処理方法、及び廃棄物収集処理の民営化の状況について質問。ティルブルグ市の人口は138,000人。
 廃棄物収集処理部門の民営化について  BATは会社組織であるが、100%ティルブルグ市の資本である。 インタビューをお願いした、ir. H.P.
Meijer
副ディレクターも、身分は公務員である。 また、現在は職員もほとんどが公務員である。  ティルブルグ市を含む北ブラバント州(NORTH-BRABANT)では、廃棄物収集処理について部門を自治体から分離して民営化しているケースが多い。北ブラバント州の7つの自治体の廃棄物収集処理を請け負う会社で、midwestという会社を設立。この会社には2人しか社員がいないが、共同で物品購入等を行ってコスト削減に努めている。7つの会社の中で、5つの会社が完全民営化(社員が公務員から会社員に)。ティルブルグ市も2006年を目途に、完全民営化を目指す。 ちなみに、BATは、全オランダの廃棄物収集処理会社中、もっとも経営効率がいい会社という評価を受けた。その理由としては、間接部門の人数が少ないこと(間接部門20名、現業部門140名)、収集車の修理等を行うテクニカルサービス部門が優秀なため、収集車の稼動効率が高いことによる。 また、収集状況について、厳密な調査を行っているそうである。ちなみに、それぞれの職員は、最低収集量が年代別に決められており、22歳~30歳は1日11トン、以下30歳~40歳は8トン、40歳以上は5トンということだそうだ。収集効率を上げるためにも40歳以上の職員に対しては、別の作業(持ち込みができる廃棄物処理プラットフォーム)での仕事への転換を薦めている。 民営化のスケジュールとしては、2006年に、職員の身分を公務員から、BATの会社員とする。ただし、既存の職員については、給料や年金、休暇等の条件については保証。ただし、2006年完全民営化後の新規採用職員については、新しい雇用条件で雇用するという。 完全民営化によって、10%の経費削減が見込まれるという。 ちなみに現在のBAT職員の平均年齢は40歳。 
廃棄物処理収集について
 分別の種類は、木(建物と家具)、ガラス、金属、紙、繊維、土と砂、石とコンクリート、化学製品、庭木からの廃棄物、それ以外(Rest)となっている。ちなみに電気製品(テレビ、冷蔵庫、コンピューターなど)は10年ほど前から、購入時に3ユーロをあらかじめ支払うシステムで、専門の処理業者に持ち込むとのことであった。 基本的には、それ以外を焼却にまわす。ユトレヒト市の廃棄物処理収集でも言及したように、オランダでは、廃棄物の埋め立て処理が原則禁止されており、分別で分けられなかったものについて焼却を行う。焼却施設は、ムーダイク(moerdijic)にあり、そこに貨車で持ち込み焼却する。ただ焼却施設の処理能力に限界があるため、焼却にまわせない廃棄物については、1週間に限って政府の許可を得て、野積みが許されているという。実際には、常に2割程度は、野積みの状態が続いているという。  オランダの廃棄物処理政策について
 当然ながら、塩化ビニル系のプラスティックについても、焼却を行うそうで、ダイオキシン発生の心配はないかとたずねたところ、排煙からフィルターを利用して除去するので問題ないとのことであった。また焼却装置には、所沢市と同様、金属の分離収集装置もあるそうである。 基本的には、分別できない廃棄物は焼却ということのようである。 庭木からの廃棄物、それ以外、紙についての廃棄物は、廃棄物を収集するコンテナーが市内各所に設けられている。それぞれいずれも135から140リッターの容量がある。 庭木からの廃棄物、それ以外は週に1回、紙については4週間に1回のペースで収集するという。年間処理量は、紙が約89,000トン、それ以外が42,365トン、庭木からの廃棄物が12,570トン。
 廃棄物処理有料化について
 現在、ティルブルグ市周辺の小さな町村では収集が有料化となっているために、廃棄物の持ち込みができる、廃棄物処理プラットフォームに周辺町村からの持ち込みが増えている。そのため、このプラットフォームへの入場については、市民だけに与えられるバッジを提示して入場するバッジシステムの導入を検討している。また、このシステムの導入に当たっての費用をまかなうため、一部産業廃棄物の受入れも検討している。産業廃棄物については完全従量制で課金するとのことである。よってプラットフォームも、従量制専用のプラットフォームを新設するとのことである。 ちなみに、市民も一般排出量の4~5倍量に達した段階で、従量制になる。それぞれの家庭の排出量は、そのためバッジに記録されることになる。また規定量に達した家庭は、従量制のプラットフォームを利用することになるという。
 所沢市との比較において
 所沢市では、廃棄物の収集処理について民間委託化を勧めている。いきなり直営から民間委託という方法以外にも、このティルブルグ市のように、収集処理部門をいったん自治体本体から切り離し、会社化し、その後完全民営化をするというシナリオがあるということは正直思いつかなかったので新鮮な印象であった。 ティルブルグ市では廃棄物収集処理に限らず、他の部門についても、一旦会社化し、その後民営化を目指すというパターンが多用されているという。 民間企業でも、組織のダウンサイジングにあたっては、別会社化というのが一般的な手法の一つであり、所沢市も他の分野でもこうした手法を検討する必要があるだろう。例えば、給食部門なども、会社化し、その後民営化という手法はありえるのではないだろうか?
以上

2005年02月14日

オランダ ユトレヒト市 廃棄物処理行政について

Utrecht市廃棄物及び港湾サービス部を訪問して、ユトレヒトの廃棄物処理行政について質問。  対応者は、部門最高責任者のmr.
Peter de Laat プロジェクトマネージャーmr. Martin Horstink  広報担当ms. Suzzune Visse の3名。
 ちなみに、Laat氏は、現在ここの部門責任者となっているが、基本はDLI-managementという会社に所属しており、「トラブルシューター」として、市との委託契約により派遣されている。 廃棄物処理部門の前任の責任者は、30年間同じ人物が就任していた。そのためこの部門の改革にあたっては、どうしても現場部門の立場に立ってしまうため、前任者を解任して、Laat氏が就任した。 Laat氏就任当初は、相当軋轢もあったようだが、今は落ち着いたとのこと。
廃棄物処理部門について
 現在も100%公営で運営。この部門はユトレヒト市にとっても伝統ある部門。2001年には125周年を祝った。現在、347名の現業職員と、70名の事務部門職員がいる。 現在ユトレヒト市は人口260,000人、2015年には、330,000人を目標としている。
部門の民営化について 現在は考えていない。議会もそのように結論を出している。政権が変わらないとこの方向性に変化はないのではないか。(現在は社会民主党が政権をとっており、もし、労働党の政権になれば民営化が進むとのことであった。) やはり廃棄物収集には特別の知識が必要。また、伝統もある。よって直営を堅持することとした。 他のオランダの都市では民営化が進んでいるが、大きな都市では直営が多いのでは。 ただし、直営で行うといっても、企業努力・合理化は進めている。組合とは、同一賃金、年金、有給休暇を補償するという条件で他組織への転換を進めている。 また、これまでであれば当部門は、廃棄物収集のみの担当であったが、道路清掃や公園清掃など、他業務も行っている。 しかし、こうした合理化の成果が上がりコストが実質的に削減されるようになるには、5-10年程度かかるのではないかと予測している。
 ユトレヒト市の廃棄物処理及び収集について オランダでは、10年ほど前に法律ができて、廃棄物の埋め立てが原則禁止となった。 そのため、焼却及びリサイクルのみとなっている。焼却炉はロッテルダムにあり、運河を通じて船で輸送。焼却炉は民間会社が運営。全国に5~6ヶ所そうした焼却炉がオランダにはある。ユトレヒト市は、そこの民間会社と契約している。焼却時には同時に発電も行っている。焼却炉の形式は不明だが、特別の炉であるとのこと。プラスティック焼却も当然行っている。ダイオキシン発生についての懸念も住民にはあったが、排出される煙について、ダイオキシンが発生しないよう処理装置を取り付けているので問題ないと認識している。焼却灰についてのみ埋め立てが許されているが量は少量である。 また、焼却前の前処理のための工場があり、ここで、リサイクル可能なものと、焼却にまわすものとを分別している。 収集については、(リサイクルに)わけられない廃棄物(段ボール、プラスティックバック、生ゴミ等)、有機廃棄物(落ち葉や枝など庭からの廃棄物)、化学製品、ガラス、紙、繊維など。住宅地では週1回、中心部では週2回、わけられない廃棄物を収集。それ以外に、2週間に一回、それぞれリサイクル可能な廃棄物を収集する。 年間1人当たり、280kgのゴミを排出している。 ただし、市中心部では分別が徹底しないため、分別収集を昨年12月にやめた。
 有料化について 有料化については検討したが、有料化すると、廃棄物処理無料の町へと流出する懸念があるため、現時点では考えていない。
 

2005年02月13日

オランダのボランティア支援組織CIVIQその③

前より続く
 自治体の支援にあたっては、特に議会向けにワークショップを開くことが多いという。いずれの議員もなんらかのボランティアの体験を持っていることが多いため、ます自分のボランティア体験を語ってもらい、そこから現在かかえる問題点を抽出してもらう。その結果、必ず話題となるのが、補助金、お金の問題、ボランティアの募集の問題、施設の問題、ボランティアに必要とされる知識が不足している問題、などが挙げられるという。そうしたことをお金、補助金で解決できないのは、オランダも日本と同じ状況である。 例えば、施設については、学校の有効活用を考える。また知識の不足については、自治体の企業との連携をアドバイスするという。実際に、ある自治体では、会計について銀行がボランティアに対して教育をしてくれているという。 特に、これからは、企業も社会的な責任を負うべきという意識が強くなってきているため、企業側はボランティアのサポートに対して熱心であるという。例えばボランティアの募集については、ある大手広告代理店が協力しているという。ただ、オランダでも、企業との連携が軌道に乗ってきたのは、ここ1年ぐらいのことだという。特に長年ボランティア活動をやってきた人ほど、営利とボランティアに一線を画したいという意識は強いという。しかし、企業部門との連携は、実際にうまくいけば、ボランティアを現代化できるということで、CIVIQでも熱心に取り組んでいる。  CIVIQのゴールとしては、ボランティア活動の深化発展を通じて、社会的な結合力を高めることだという。
 CIVIQへの訪問を通じて、所沢市のボランティア活動をより促進させるために必要だと考えられることを、何点か挙げてみたい。 1)ボランティア政策の確立   ボランティア政策についての基本的な考え方を整理する必要がある。また、若い世代をボランティア活動に呼び込むためには、これまでのやり方では限界があることを認識し、そうした認識に基づいた政策を打ち立てるべき。
 2)ボランティア支援センターの設立と充実   ボランティアに予算をつける窓口としての支援センターだけではなく、知恵をつける支援センターとするべきだろう。ただし、その際に問題となるのは支援する側の知識の問題である。 3)市内企業との連携   この点が一番難しいとは思うが、より一歩進んだ形で、予算や物品の提供という範囲を超えて、施設やノウハウの支援ということが重要であろう。  以上

2005年02月12日

オランダのボランティア支援組織CIVIQその②

続きです。
 CIVIQの運営に当たっては、オランダ政府から半分、そして、クライアントとなる地方自治体や企業から半分の運営資金を得ている。特に、自治体や、企業からの資金は、CIVIQが運営するサービスに対する報酬という形で支払われる。
 今回は、特に地方自治体とCIVIQとの関係を知りたかったため、主に地方自治体を相手に仕事をされている、Hannekeさんが相手をしてくれた。
 CIVIQのミッションは、ボランティア活動を「促し、現代化させ、高める」(Promoting modernizing and boosting)ことである。 CIVIQが支援の対象とするのは、個々のボランティアというより、ボランティアの組織及び、それを支援する地方自治体ということである。 地方自治体に対しては、まず最初に、自治体のボランティア政策を立案することを支援している。  ここで、オランダの地方自治のシステムを簡単に紹介すると、基本的に議会(coucil)が議決権だけでなく行政の執行権を持っている。選挙で選ばれた地方議員(councillor)は、それぞれ担当する部門の委員会について、直接自治体を指揮監督する。例えば、日本で言えば、私は現在、教育福祉委員会に所属しているが、この委員会が、直接、保健福祉部や、教育委員会を指揮監督することになる。 よって、自治体ボランティア政策も、議員は単に市長部局が作成したものを議決するだけではなく、その作成プロセスにも関与する法的権限があると言ってよいだろう。 やはり、議員への働きかけは重要で、市長部局と話し合って決めた政策も、議会の反対によって、あやうくつぶれかけたことがあるそうだ。一方で、市長部局が熱心でないため、議員の方から、市長部局に働きかけてくれという事もあるという。この辺の事情は日本とよく似ている。
 デルフト焼きで有名なデルフト市では、CIVIQが支援してボランティア政策を立案。これまでのボランティア支援センターを大幅に改組したそう。実際に一定規模以上の自治体にはどこもボランティアセンターがあったそうだが、いずれもあまり機能していなかったそう。 デルフト市でも、従来は各団体からの要請を受けて、ボランティア募集の活動が主だったそうであるが、募集業務は一切取りやめて、現在はボランティア団体へのコンサルティングとアドバイスを行うことに業務を集中するようにしたという。人材確保を例にとれば、ボランティアを集めるのではなく、どうやったら自分たちで人材を集められるかをアドバイスするように転換したという。 つまり「えさを与えるのではなく、えさの上手なとり方を与える」役割に、地方自治体のボランティア政策が転換したといえよう。ところが、実際には一部の昔からあるボランティアグループはやはり政府に対する依存体質が残っているそうである。「100%地方政府に依存するボランティア団体は、現代社会とうまくやっていくことができない」といって、依存体質をもった団体を説得するという。
続きます。
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2005年02月11日

オランダのボランティア支援組織CIVIQその①

2月8日から、地方自治について先進的な取り組みをしている、オランダを訪問しています。
 今日は、一番最初に訪れた、オランダユトレヒト市にある、全国ボランティアセンターCIVIQについて報告します。ここの組織を訪れたのは、当然ながら、これから所沢市のボランティア支援がどうあるべきか参考とするためです。
 オランダは、ボランティア大国で、約1600万人の人口のうち、約4分の1がなんらかのボランティア活動を行っているといわれている、ボランティア大国です。 そんな国と日本を比較しても、そもそもの基盤が違いすぎるのでは、という意見もあるとは思いますが、いろいろと担当者とお話をしてみると、むしろ日本のボランティア活動が直面している課題と共通性がありそうです。そういった点で非常に参考になりました。
 お話をお聞きしたのが、地方自治体担当の drs. Hanneke Matemanディレクターと、drs. Leonie
Ostendrop プロジェクトディレクターです。お二人とも女性でした。(drs.とは、オランダで学士のこと。オランダでは大学進学率が10%。なので学士は非常にステータスが高いそう)
 以下は、私の作成したレポートからの転載です。
CIVIQは、オランダの国レベルで、ボランティア活動を支援するためにある団体。 ボランティア支援のためのNPOと言ってもよいだろう。創設は2003年。オランダボランティアマネジメント基金(VM)とオランダ全国ボランティアセンター(NOV)が合併して創設された。   オランダでは人口1600万人中400万人がなんらかのボランティア活動を行っているといわれている。 現在ボランティアを支援する全国レベルの団体は、このCIVIQしかないそう。地方レベルではいくつかある。創設は、十数年前であるが、より積極的な事業展開を行うようになったのは、ここ数年のことである。 もちろん、その背景には、オランダ中央及び地方政府の「行政の現代化」の流れを受けてのことである。「行政の現代化」とは、ここでは詳しく触れないが、簡単に言えば、「行政にも経営感覚を」ということになる。あるいは、最近流行のNPM(新しい行政経営)のひとつの流れといってもよいだろう。
 同時に、オランダのボランティア活動も日本同様、既存のボランティア団体が、多様化するニーズに追いつけなくなってきたこと、新しい若いメンバーがあつまりにくくなっているなど、従来の手法や考え方では、対応できにくくなってきていることももうひとつの背景となっている。
 これまでボランティア団体への支援は中央政府レベルで直接行っていた。しかし、社会のニーズが多様化し、ボランティアといえども、より高いレベルの仕事内容が求められるようになってきた。例えば、補助金申請などでは、申請書、及び報告書ともに、計画性の高い、詳細な内容の提出が求めれら、報告書が不十分であると、補助金の返還を求められることもあるそう。
 そうした状況を受けて、よりきめ細かい対応を行うため、ボランティア団体への支援を、ここ10年で、地方自治体も半分の役割を担うことになった。それまで、ボランティア団体の支援はあまり熱心に行ってこなかった地方自治体は、この政策変更を受けて、自治体独自のボランティア政策(volunteer
policy)を打ち立てる必要に迫られた。 つづく

2005年02月05日

佐々木毅先生の講義とくわけん質疑

1月31日、(財)松下政経塾政経研究所がOB向けに開設している政経セミナーに参加しました。講師は、政治学がご専門の東京大学教授で、この3月まで東京大学学長(東大は総長かな)の佐々木毅先生です。
佐々木先生は、国政選挙小選挙区制度の産みの親ともいえる方といってよいでしょう。講義内容は、ここ10年の政治状況の変化と現状について、どのように整理するか、ということが中心でした。
以下 講義内容です。
政治状況の変化としては、連立政権がタブーでなくなったこと、知事や市長など自治体の首長が注目されるようになったこと。また、政治や政府の万能感がすっかり消えうせてしまったこと。もはや、政府は「無限責任」は負えない。これは政治の担い手の問題。担い手、主体はだれか?政党政治か、それとも首長政治か?
自民対民主、地方対中央 どちらかいっぽうの対立軸では捉えられない。
中央政治は、地方分権の進展と財源不足、そして(シビルミニマムの充足)で遠くなってしまった。憲法の規定上、国会は国権の最高機関。しかし、権力は常に移動する。
外交、安全保障問題は進歩。しかし、年金、保険など国民の便益、利害に関わる問題については、まだ積み残したまま。
上記のような一定の問題提起がなされた後、質疑応答になりました。くわけんは、「政党政治の充実のためには政党シンクタンクの充実が必要ではないか?」と質問。
それに対しての回答。
 シンクタンクも大事だが、政策を作ることより、それを時間軸を意識しながら実行することがもっと大事。いつまでに結論を出す、ということをはっきりとする必要あり。現在のように常設方の審議会がだらだらと審議するのはいかがなものか。時間の観念についてはもっとシリアスに考えるべき。とにかく、最近の政府は実行力が落ち、スピードも遅い。そして政治家も責任を取らない。
政策は実行されてナンボ。政策の内容と効果もしっかりと見極めるべき。 という回答をいただきました。
 なるほど、所沢市もだらだらと審議ばかり続けて結論がなかなか出ない審議会もありますね。次回の議会では、その点についてもただしていくべきであるという趣旨の質問をする予定でしたが、佐々木先生への質疑応答で、益々その意を強くしました。どうぞ、楽しみにしていてください。
他の方からも質問があり、その回答もいただきましたが、割愛させていただきます。