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2010年06月27日

所沢市事業仕分けを傍聴して①

 6月26日、27日の2日間にわたっておこなわれた、所沢市事業仕分けを傍聴しました。
 全部というわけにはいかず、様々な仕事の合間をぬっての傍聴となりました。

 結論からいえば、傍聴していてもおもしろかったし、所沢市の行政にとっても有意義だったと思います。
 資料もよくまとまっており、これぐらいのものを議会にも提出していただきたいと思いました。

 ただ、評価については全般的に甘い印象です。そもそも事業仕分けの対象となった時点で、本来であればなんらかの見直しを求められているので対象になったわけですから、もっと厳しい評価があってしかるべきと思いました。

 事業仕分けの実施については、特に公明党の議員の方々が以前より議会で熱心に提案されていました。わたしも何回も事業仕分けの実施を執行部に迫ってきました。

 私も会派の仲間と一緒に、2007年の7月、8月に事業仕分けのまねごとをしたことがあります。

 そういう意味でもようやく所沢市でも事業仕分けが実現したので素朴にうれしかったです。

 今回、ちゃんと傍聴できたのが、本日行われた、集団資源回収報償金交付事業、市民フェスティバル開催支援事業、確かな学力定着事業、第2期市街化調整区域汚水管渠布設事業です。昨日は、ざっと雰囲気を見る程度しかできませんでした。
 
 以下、わたしがこれまで対象になった事業について、どういった意見を議会で主張してきたかを含めて、次回以降仕分けについて評価いたします。 つづく
  

 

2010年06月24日

 介護保険は老いを守るか(岩波新書)批評④

 ちょっとネガティブな評価になってしまいましたが、今回はポジティブな評価を。
 というか、いまから紹介することを読みたくて、今回この本を買いました。
  
 三つの入口、三つの出口(112p)の部分です。
 著者は、介護労働安定センターが毎年実施している「介護労働実態調査」に基づき分析しています。
 著者によれば、介護職員の就職理由は「働きがいを求め、人の役に立ちたくて、今後もニーズがある」
 。辞める理由は、「経営理念、人間関係、収入」。「男性だけ見ると、「収入」が全項目のトップに」ということだそうです。

 続けて著者は、
 特養ホームなどでは(中略)同族による経営や、二世、三世の施設長も多い。「昇進の見込みがない」「使用人扱い」と怒る職員のいることも確かなのである。特養(特別養護老人)ホームの施設長には、試験による国家資格が必要という職員も多い。 とのことである。

 私も、以前松下政経塾で高齢者福祉を共同研究で実施した際に、いくつかの特養を訪問させていただいったが、当時は、介護保険施行前ということもあり、特養は、宗教系か地主系が多かった。特に地主系は、自分の地所の有効活用策として、特養を運営しているケースが多かったような印象である。
 特養は、国からの貸付制度もととのっており、また、開設できれば確実に入所者が見込めたため、手堅い資産運用という側面もあった。ただし、運営資格が厳密で、社会福祉法人でなければほとんど認められず、社会福祉法人にした場合、地所については法人への寄付となる。
 こういう経緯もあり、どうしても、特養ホームは自分たちの資産という意識が強い。当然、資産を手放したので、施設から上がるフローを親族で分け合うのは当たり前という感覚になる。よって、今回著者が指摘したような、施設長の世襲、親族支配、が起こってくる。

 介護保険施行以後は、そういった資産運用としての特養という形態だけでは需要に追い付けないので、様々な運営主体が増えていますが、この一連の問題は、非常に根深くかつ深刻で、特に地方においては、政治勢力とそうした社会福祉法人が結びつきが強いので、保険者が市町村である介護保険にあっては、透明性の確保や私物化の排除に困難が伴います。

 さらには、参酌基準としての施設整備の34%が今後廃止になると、そういった癒着が残っていた場合には、一定の政治力をもつ法人がさらに勢力を拡大する可能性は敢えて指摘しておきたいと思います。
 もちろん、原則は参酌基準廃止は賛成ですけどね。
 
 

2010年06月20日

阿久根市長のおかげで議会活性化

 鹿児島県阿久根市の竹原信一市長の暴走が続いている。今度は、議会を開かずに専決処分で、議員の報酬を日当制とした。
 竹原市長のこの行動のおかげで、私の予想では、議会に会議の招集権が付与されることになるだろう。実際に、福島県矢祭町の日当制のおかげで、議員の報酬がこれまで、選挙管理委員や教育委員などの他の非常勤特別職公務員と一緒の条文が、議員の報酬が分離されて、新たに位置づけられた。
 これまでも会議の招集権がなぜ首長にあるのか地方制度調査会などでも議論がなされてきたようだが、竹原市長のおかげで、こういうふうに制度が悪用される以上、議会に、議長に会議の招集権が付与される形で議論が多分すすんでいくだろう。
 ありがとうございます。竹原市長。

2010年06月19日

 変えよう地方議会

 議会改革について河北新報の記事で、所沢・傍聴席の皆様と、たまたま出前市政報告をさせていただいたくわけんの後ろ姿が掲載されています。

 傍聴席/対話が開く新たな扉

 河北新報の、変えよう地方議会 はこの記事以外にも大変参考になる記事があります。

2010年06月14日

介護保険は老いを守るか(岩波新書)批評③

 さて、この著書において最も違和感を感じたのが、著者が披歴する「ローカルルールの暴走」(52p)という表現です。著者は、特に生活援助における同居家族の定義において、自治体によってまちまちであることを問題にします。そして、そのことに対して厚生労働省老健局振興課が「市町村においては、同居家族等の有無のみを判断基準として、一律に介護給付の支給の可否を機械的に判断しないようにされたい」と発出したことを称賛しています。(59p)
 
 立場が違うと同じ内容についてこれほど見方が変わるものかと思いました。

 まず、介護保険の保険者は誰でしょう。市町村です。現状の介護保険制度は、いちいち、厚生労働省の老健局振興課が、全市町村の介護保険制度を取り仕切っています。
 市町村も唯唯諾諾とそれに従っているのも情けない話です。

 ここで、あらためて確認すると、まず、振興課発出の文書は、ただの技術的助言(地方自治法第245条の4)にすぎないわけで、法令の解釈権は、自治体にあると地方分権一括法以降はなっています。ですから介護保険法の解釈も、保険者たる自治体にあるのであって、そのことを「ローカルルールの暴走」といわれてしまうと、地方分権の理念からすれば、ちょっと容認しがたいです。

 もちろん、こうした問題は、地方議会などで、その問題点をしっかり受け止めて議論すべきテーマだと思います。そこに、わざわざ水戸黄門の印籠のごとくに振興課の文書を持ち出して言うことを聞けというのは、地方分権に反する営為であり、著者はそうした背景をわかって、あえて書いているのか、あるいは知らないで本当に書いているのか。およそ岩波新書としては、松下圭一先生の三部作も出版しているのですから、そうした岩波新書としての全体的な整合性はどうなっているのか、ちょっと疑問なところであります。

 いずれにせよ、実態としては責任逃れのために厚生労働省からの技術的助言に頼り切っているところに保険者たる市町村のだらしなさもあり、なんとも言えないところではあるのですが。

 つづく
 

 

2010年06月13日

介護保険は老いを守るか(岩波新書)批評②

 さて、前回の続きです。
  
 本著は、2005年介護保険の制度改正後の変化を中心に書かれています。
 著者は、2005年~2009年まで社会保障審議会・介護給付費分科会委員として、報酬改定にかかわっていました。にもかかわらず、「適正化」という厳しい給付制限(利用制限)に気がつかなかったと言います。このことも本書を書く動機となったそうです。(244p)
 この著者は随分正直な人だなと思いました。この改正については、ある事情で、リアルタイムでウオッチしていました。ですから、2005年改正はあきらかに給付制限を目指したものであることがわかっていたので、気がつかなかったというのはどうしてなんだろうという疑念も抱きます。よっぽど著者に対する厚生労働省側の情報コントロールが成功したのでしょうか。

 著者もあとで気づいたと述べているように、2005年改正の大きな狙いの一つが、生活援助(家事援助)の大幅な削減でした。家事援助については、私も、ある知り合いのうちに遊びに行った際に、お手伝いさんがいるのでびっくりしたのです。「どうしたの」と聞くと介護保険の家事援助サービスを利用してきてもらっているとのこと。
 また、来ている方に対して、まるで家政婦のように用事をいいつけているのにさらにびっくりしました。当然事業者としては、ご機嫌をそこねて契約を解除されては困りますから、家事援助の本来の趣旨を利用者に対して説明するということもできないでしょう。

 生活援助の制限理由として筆者も紹介しているように、「軽度者が無駄に介護保険を使った」「過剰サービスを組み込んだケアプラン」にあります。このころ、ちょうどコムスンの過剰給付の実態などが暴かれた後ということもあります。
 
 もともと、厚生労働省の狙いとしては、介護保険導入時には、大盤振る舞いで、新規参入を促し、一定程度参入がなされた後に、給付を絞っていくという戦略があったのではないかと、思っています。
 
 現在、私立保育園の新規参入には手厚い補助がなされ、公立保育園については、一般財源化で事実上補助をなくし(実際には交付金に含まれている)、私立保育園えの新規参入誘導を行っていますが、これも時期が来たら、必ず私立保育園の補助率も下げていくことでしょう。案の定、昨年度、補助率の引き下げが行われ、一旦支給された補助金を返還することになりました。

 さて、著書では縷々、生活援助、特に同居家族がいる場合の生活援助が打ち切られたことによる事例が紹介されます。いずれの事例も大変深刻であることはわかります。そして、この著書の目的の一つはそうした介護保険制度の不備に伴う深刻な事例を紹介することに多分主眼が置かれているのだと思っています。そういう意味では大変参考になりますが、では、そのまま生活援助を続けていて介護保険財政は大丈夫だったのかという懸念もあります。

 筆者は、制度5年を経て、家政婦的に生活援助を利用する事例が少なくなってきたと述べていますが、それがマクロ的にみてもそうであったかの説明はありません。

 もし、生活援助抑制の立場に立つ論者が同じような本を書いた場合、こんどは逆に、どれだけ生活援助を本来の趣旨からそれて利用していた事例をいくつも並べることができるでしょう。
 
 では、はたして、どちらが正しいのか。その正解は多分ありません。例えば、生活保護の場合は、不正受給を抑制するために、ミーンズテストといわれるプロセスで、ほぼ受給者の生活実態が丸裸にされてしまいます。介護保険にもミーンズテスト的な要素を導入すればそれは、不正利用は抑制できるでしょうが、実際には、その生活保護ですら不正受給があるのです。

 つづく

 

 

 

 
 

2010年06月12日

 6月定例会の一般質問項目です。

 6月定例会一般質問の質問項目です。
 6月21日月曜日 午後2時ごろからの予定です。
 今回はいずれも政策提案が中心になります。
 インターネット中継や、議会傍聴席へもよかったらお越し下さい。
 傍聴席の両側に、モニターも設置されみやすくなりました。 

 子ども手当支給開始にあたって
     学校給食の公会計化
保育料引き落としと子ども手当口座の同一化
関係補助金の整理・統合等について
  
  予算策定過程の公開について
     予算の編成過程から公開することによってより住民満足度の高い予算づくりを

  市民活動支援について
     市税減免
地縁団体に対する法人化と施設補助、登記
所沢独自のNPO認証制度を
NPO免税

  サイネージの導入について
市政広報効率化のサイネージ設置について


  発達しょうがい児通級
     中学生向け発達しょうがい児通級の創設を

  学びノートの著作権問題について
     著作権料を払うとした場合のコスト
著作権料を払う必要性は

  公共施設マネジメント白書
     施設の運用実績やコストの見える化を


 その他

2010年06月11日

介護保険は老いを守るか(岩波新書)批評①

 先日の自治体経営学会で、介護についてのシンポジウムのパネラーであった沖藤典子氏の発言がおもしろかったので、彼女が書いた岩波新書「介護保険は老いを守るか」を早速買って読んでみました。
 非常に示唆に富む構成と内容でしたので、賛同する部分と賛同しかねる部分についていくつか批評(批判ではありませんよ、批評ですよ)をしながら、あるべき介護の姿について考えてみたいと思います。

 岩波新書では、これまでも、私の松下政経塾の先輩である、山井和則著、世界の高齢者福祉や、山井さんと山井さんの奥さんであり、私の松下政経塾の同期である斉藤弥生さんによる体験ルポ 日本の高齢者福祉という名著があります。
 ちなみに、体験ルポ日本の高齢者福祉には、私の名前も登場しますので、探してみてください。
 
 松下政経塾で研修担当をしているときに、山井、斉藤両氏のご指導のもと14期生の共同研究テーマとして「高齢者福祉」を取り上げました。
 そんなこともあり、介護保険という制度ができるという話は、山井さんから聞いていました。
 それ以外にもこの二人からは、随分と高齢者福祉や地方分権について学ばせていただきました。
 二人が、当時の松下政経塾の機関紙に書いた記事はいまでも大変参考になります。

 高齢社会こそ、市町村の時代

 また、14期生には、全国の高齢者福祉施設で現場体験をしていただきました。
 その時のレポートが

 政経塾生 老人福祉実習日記

 です。私も、研修担当として、老人病院で実習のまねごとをさせていただきました。また、いくつかの特養施設を見学しお話をきかせていただきました。

 つづく

2010年06月09日

家庭新聞 市政60周年によせて 寄稿しました

市政60周年に寄せて
市議会議員 くわはた健也

 60周年を迎えて、今後の20年の所沢市がどうあるべきかを考えてみたい。
 最近は、マニフェストが常識になってきた。ところがマニフェストは、どうしても任期内にできることが中心となってしまうため、より長期的な構想についての議論、構想が希薄になってしまう。会派「翔」では、マニフェストとあわせて、所沢サバイバルプランという中期構想を提案している。
 現在、時期サバイバルプランに向けて改定作業を進めているが、現状における論点を呈示しておきたい。
 論点1)大所沢市(政令市)
 70周年に、所沢市は地図上に存在しているのか?行政規模からいえば、人口30万人規模の都市が最も行政効率が高いと言われている。しかし、主に財政的理由から、大都市近郊の合併もこれからは検討しなくてはならない時期に来ている。中核市を目指すのか、政令市をめざすのか?地方分権の進展によって、権限移譲が進めば、政令市を目指さなくても、60万人規模(所沢、入間、狭山)の自治体であれば、政令市なみの権限を持てるようになると予測している。
 論点2)コンパクトシティ
 所沢市の都市化が進んだ一時期、所沢市では、中央線沿線の武蔵野市や三鷹市のように、全区域が都市計画区域となっていくところまで視野が広がったのかもしれなし。しかし、市政60周年の現在、そうした可能性は少子化が進む現在、想像しがたい。6割の市街化調整区域を残して、4割が市街化という割合を残しつつ、高齢化社会、環境問題を考え、コンパクトシティ化を指向していくことになるだろう。その際に重要なのが、市街化調整区域の下水道整備である。また、駅周辺の容積率緩和とそれに伴う日照権問題もでてくるだろう
 論点3)ごみ処理の有料化
 税金を払っているのだから、無料化は当たり前という議論もあるが、6割の市街化調整区域を持つ所沢市にとっては、生ごみ処理の余力は大きい。有料化によって即座に減少するのが生ごみであり、現状の燃やせるごみの有料化は、ごみ減量の動機づけのためにも選択肢としては考えていかなくてはならない。
 論点4)西武新宿線東西線乗り入れと、12号線の東所沢延伸
 所沢の人口構造を考えると、これまで税収をおさめて下さっていた方々が、今後は高齢者サービスを中心とする行政サービスの旺盛な需要者となってくるだろう。その変化をゆるやかなものにするためにも、若い世代の方々が新たな納税者となって移り住んでいただけるようなまちにならなくてはいけない。そのためには、東京圏の従属変数都市である所沢市は、東京圏への通勤の利便性の向上がまちの発展にとって重要となる。
 以上、今回は論点の提示と若干の選択を示しました。詳しくは、秋までに策定する新プランをご期待下さい。